燕本店 11月の営業日のお知らせ

燕本店(工場見学含む)の11月の営業予定は以下の通りでございます。

11月3日(土・祝)休業

11月23日(金・祝)休業

11月24日(土)通常営業

※上記の他は、通常通り月〜土の営業となっております。

燕三条工場の祭典、始まりました

いよいよ始まりました「燕三条 工場の祭典」。
2018年10月4日(木)〜7日(日)までの4日間、新潟県燕三条とその周辺地域で開催され、ものづくりに携わる人々の思いや誇りがつまった109カ所の工場(KOUBA)の扉が開かれます。
玉川堂では期間中、小皿製作体験、ぐい呑み製作体験を行い、駐車場ではフードトラック「SUZUVEL」の食事もお楽しみ頂けます。

開催期間:10月4日(木)〜7日(日)

【 体験1 】小皿製作体験

日時:10月4日(木)13:30〜、14:30〜、15:30〜(各回約50分)

10月5日(金)10:30〜、13:30〜、14:30〜、15:30〜(各回約50分)

定員:各回先着5名

料金:1,000円(税込)

内容:金鎚を使って銅板を小皿に仕上げます。

 

【 体験2 】ぐい呑製作体験…受付終了致しております。

日時:10月6日(土)10:00〜16:00

10月7日(日)10:00〜16:00

 

「燕三条工場の祭典」公式サイト

https://kouba-fes.jp/about-2018/

JAPAN TRADITIONAL CRAFTS WEEK 2018

毎年開催の、衣食住を扱うライフスタイルショップなどを通じて日本各地の伝統的工芸品のPRや展示販売をするイベント。都内30店のライフスタイルショップが参加し、玉川堂青山店は新潟県の小千谷縮と、銀座店は佐賀県の伊万里・有田焼とコラボレートし、新たな魅力をご提案致します。

期間:10月19日(金)〜10月31日(水)

《 玉川堂 青山店 》

営業時間:11:00〜19:00(火曜日定休)
限定商品:小千谷縮のMyぐい呑巾着

麻の風合いと小千谷縮ならではのシボが手の平に何とも心地よい感触をもたらします。この小千谷縮で作られた酒器用巾着。今回は約100種類を揃えました。Myぐい呑を巾着に包んで懐に忍ばせたら、気に入りのお店で一杯どうぞ。

《 玉川堂 銀座店 》

営業時間:10:30〜20:30(無休)
限定商品:白磁や青磁、染付などの器と銅器のコーディネート

透き通るような白磁の肌、深い藍の染付に鮮やかな赤絵の器たち。銅器の鎚目が放つ鈍い光との共演で、これまでにない表情を双方にもたらしています。

《 期間中イベント 》
プレゼントと交換できるスタンプラリーや、写真を撮ってインスタグラムに投稿すると工芸品が当たるチャンスもございます。秋の散歩を楽しみながら、是非この機会に日本伝統の手技に触れてみて下さい。

https://jtcw.jp/2018/

価格改定のお知らせ

平素より弊社製品をご愛用頂き、誠にありがとうございます。

2018年11月1日より、製品の価格改定を実施致します。

今後も引き続き皆様のご期待に添える製品を一つ一つに心を込めて作り続けて参りますので、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

ジャパン・ハウス ロンドン開館記念行事

「燕三条金属の進化と分化 BIOLOGY OF METAL: METAL CRAFTSMANSHIP IN TSUBAME SANJO」開催中のジャパン・ハウス ロンドンで、去る9月13日に開館記念行事が行われ、英国王室よりケンブリッジ公爵殿下がご来館されました。日本からは政府代表として麻生太郎副総理がご出席され、ケンブリッジ公爵殿下と共に燕三条の金属加工技術を視察されました。鎚起銅器の製造工程については実演を交えてご説明申し上げ、ケンブリッジ公爵殿下には地元小学生と共にワークショップにご参加頂き、銅製小皿の製作をご体験頂きました。また、ジャパン・ハウス ロンドンからケンブリッジ公爵殿下へ記念の品として、鎚起銅器の湯沸が贈呈されました。

 

《 BIOLOGY OF METAL: METAL CRAFTSMANSHIP IN TSUBAME SANJO(開催中)》

開催期間:9月6日(木)〜 10月28日(日)

営業時間:月〜土 10:00〜20:00
日・祝 12:00〜18:00

「ロンドンジャパンハウス」公式サイト

https://www.japanhouselondon.uk/whats-on/biology-of-metal-craftsmanship-in-tsubame-sanjo/

 

玉川堂メールマガジン第112号「新たな日本発信の拠点〜ジャパンハウス」

[第112号]新たな日本発信の拠点〜ジャパンハウス

玉川堂青山店・銀座店 有元葉子フェアと製作実演

玉川堂青山店・銀座店 有元葉子フェアと製作実演

鎚起銅器の玉川堂と、シンプルなライフスタイルを提供する有元葉子氏のコラボ。
匠の技が作り上げる洗練されたフォルムと華やかな金色と銀色が織りなすハーモニー。
有元葉子コレクションが一堂に揃うこの機会に是非ご来店ください。

《 有元葉子フェア 》
期間:9月12日(水)~10月3日(水)
場所:玉川堂 青山店(港区南青山5-11-5)
玉川堂 銀座店(中央区銀座6-10-1)
〈 販売アイテム 〉
湯沸・ティーポット・茶筒・急須台 など

《 製作実演のご案内 》
フェア期間中にベテラン職人による製作実演を行います。
今回は青山店にてティーポット本体への鎚目入れ、銀座店にて注ぎ口の製作を
致します。有元葉子氏が惚れ込んだ職人技を是非間近でご覧ください。

日時:9月15日(土)青山店
9月16日(日)銀座店
時間:12:00~17:00(両店とも)
職人:渋木好之(職人歴47年)

[第120号]インバウンドの心を掴んだ高山市に学ぶ、未来の産業観光

 岐阜駅から富山駅を結ぶJR高山本線は、電化されておらず、ディーゼルエンジンでゆっくりと走る単線の山岳路線。飛騨高地の山間を縫うように木曽川と飛騨川に沿って走り、絶景が続く風光明媚な路線です。しかし、高山駅に到着するとその光景は一変し、訪日外国人の乗降者で駅ホームは溢れんばかり。もはや海外の観光都市に到着したかのような錯覚に陥ります。日本の地方都市におけるインバウンドの先駆的なモデルケースとして必ず挙がるのが岐阜県高山市であり、以前から注目していましたが、想像以上の光景に思わず目を疑ってしまいました。それもそのはず、人口約9万人の高山市に年間約50万人という、人口の約5倍の訪日外国人が訪れているのです。東京から新幹線と特急を乗り継いで約4時間半、中部国際空港セントレアから特急を乗り継いで約3時間半と、高山市は決してアクセスが良いわけではありません。百聞は一見にしかずとはまさにこのことで、視察として訪れている方々も一様に驚かれていました。

 高山市におけるインバウンド対策は、1986年に飛騨地方1市19町村(当時)が国の「国際観光モデル地区」に指定され、同年「国際観光都市宣言」を行ったことが始まりです。以来、外国人が安心して観光できる街づくりを、他の地方都市よりも先駆けて取り組んでいきましたが、2011年に高山市役所に海外戦略部が設置され、より本格的なインバウンド増加を目指す対策が講じられると、そこから快進撃が始まります。インバウンドが急激に増え始めた時流に上手く乗り、海外戦略部を設置した当時は年間約10万人だった訪日外国人が、6年後の2017年には50万人を超え、高山市民も驚く想像以上の活況ぶりに。かつては木工産業で栄えた高山市は、今や観光が主力産業となり、木工産業の産業観光も盛況です。すでに30年前から訪日外国人の来訪を前提とした街づくりを行ってきたため、彼らが感じる「日本らしさ」を意識して、街並みを保存、改修してきたことも大きな影響力を発揮しており、旅行専門家は高山市を「外国人を意識して街を整えた先駆的なケース」と賞賛しています。

 高山市内を散策すると、インバウンド対応の素晴らしさに目を見張ります。多言語対応は地方都市随一と言われ、高山市街地の観光マップや観光サイトなどは11言語対応という充実ぶり。官民が協力して免税一括カウンターを商店街に設置したほか、免税店マップも作成しており、訪日外国人に好評です。日本政府観光局(JNTO)が外国人旅行者を対象とし、「旅行中最も困ったこと」についてのアンケートによると、「無料公衆無線LAN環境が整っていない」という意見が最多の46%を占めており、以前からその整備の遅れが指摘されています。その点においても高山市はいち早く改善を進め、「外国人が一人歩きできる街づくり」をコンセプトに、7日間無料でWi-Fiに接続できるサービスを行っています。これは高山観光に便利なだけでなく、万一の災害などに備えた緊急情報も提供することができるため、快適でかつ安全に滞在できることができます。これによって、観光客がSNSで高山の魅力を発信する機会が格段に増え、結果、新規の訪日外国人の取り込みにも大きな役割を果たしているのです。

 高山市が世界から注目を集めた契機になったのは、「ミシュラン三ツ星街道」の存在が挙げられます。金沢市、高山市、白川村、南砺市、松本市が広域で連携し、兼六園、合掌造り集落、松本城などの世界遺産や国宝を巡る観光ルートがミシュランガイドに掲載され、世界的に話題となっているのです。日本ではあまり馴染みのない名称ですが、このルートを「サムライルート」、アジア圏では「昇龍道」と呼ばれており、訪日外国人向けの大人気の旅行コースとなっています。多くの訪日外国人は、高山観光だけを目指しているわけではありません。高山市は周辺地域も含めた広域で観光を考え、近県の観光地と連携を取りながらプロモーションを行っており、近郊の観光地の魅力が合算されているのです。近隣自治体との連携を積極的に行い、石川県金沢市や長野県松本市とは、1989年から共同で外国人向けの観光ルートを開発してきた経緯があり、その地道な努力がここ数年で一気に開花したと言えるでしょう。

 東京、富士山(静岡・中京圏)、京都(関西圏)を観光する「ゴールデンルート」は訪日外国人の定番コースですが、ここ数年は「サムライルート」へと移行しつつあり、その大ヒットを受けて福島復興に繋げようと、東京、茨城、栃木、福島の「ダイヤモンドコース」が新設されました。今後その動きは全国に広がり、広域連携の観光コースはインバウンドの新たな潮流になると思われます。ゴールデンルートではいわゆる爆買いが起こり、「モノ消費」が生まれましたが、現在は、サムライルートに見られるような、都会の喧騒を離れて日本の原風景を巡り、体験的価値にお金を払う「コト消費」へと移行しつつあります。このコト消費はインバウンド対策の最も重要なポイントとなり、10年後のインバウンドはこのコト消費を究極化させた「匠ルート」の時代が到来し、地場産業オープンファクトリー巡り、酒蔵・ワイナリー巡り、農家巡りなどを広域で連携させ、生産者を直接訪問する「産業観光」がトレンドになっていくものと考えています。東京を始めとする大都市でモノを購入するのではなく、生産者から直接モノを購入する時代が到来し、地方創生の新たな局面を迎えることでしょう。

 東京五輪が開催される2020年には年間4000万人、その10年後の2030年には年間6000万人の訪日外国人誘致を目指す日本政府。人数目標はもちろんのこと、日本社会が抱える人口減少問題を補う経済効果として大きく期待されているのが訪日外国人による旅行消費です。また、日本政府は現在約4兆円の訪日外国人の日本国内消費額を、2020年の東京五輪開催年は一気に倍増の8兆円、2030年にはさらに約倍となる15兆円を数値目標としています。これをクリアするためには、日本の原風景を巡るルートだけではなく、匠ルートという新たなルートも確立させ、「産業観光」を推進させていくことは不可欠な要素となります。2020年東京五輪以降、消費傾向は大都市から地方都市への移行がかなり勢いで加速し、2030年には産業観光が日本経済の柱の一つとして成長していくことが予想されます。その大きなムーブメントを起こしていくためにも、高山市のインバウンド成功は大きな参考事例となります。10年後の産業観光のビジョンを描きながら、私たち燕三条内の連携、そして他の地場産業との連携もより一層強固としていきたいと、高山市を訪問して心を新たにしました。

[第119号]第4次産業革命・インダストリー4.0

 インダストリー4.0という潮流が、ものづくりの現場で世界的な注目を集めています。2011年からドイツが官民一体となって推進している国家プロジェクトの名称で、第4次産業革命(4.0)を意味します。業界や企業の垣根を越え、工場同士、もしくは工場と顧客などをインターネットで繋ぎ=「IoT(Internet of Things)」、「モノのインターネット」を構築させ、「スマート工場(考える工場)」時代の到来を目指すものです。それを実現させるためにはまず、様々な工場と工場を繋げるための通信手段やデータ形式などを標準化していく必要があります。さらにはモノやサービスに関わる全ての施設が、企業の垣根を越えてネットワークで繋がる社会を実現させることで、ドイツは国内を「1つの大きな工場」に見立てるという構想を描いています。これが実現すれば、ドイツの工場は全てスマート工場となり、ものづくりの可能性は無限大に広がります。工場が変われば消費者の行動も変え、それに伴って全く新しいビジネスも次々と誕生するでしょう。インダストリー4.0は、ドイツ経済のみならず、世界経済を変革させる大きな可能性を秘めています。

 第1次産業革命(1.0)は、18世紀にイギリスで起きた蒸気機関の発明による機械化で、大規模工場が出現して初めて本格的な産業が誕生しました。第2次産業革命(2.0)は、20世紀初頭、電力の普及によってベルトコンベアが使用されるようになり、大量生産が可能に。第3次産業革命(3.0)は、1970年代以降、コンピューターを利用した生産の自動化によって生産システムが劇的に進化し、日本の製造業は急速に競争力を付け、ものづくり王国の地位を築きました。そして今世界経済は、第4次産業革命「インダストリー4.0」へと大きく移り変わろうとしています。ではインダストリー4.0の本質とは何か。それは公共インフラです。遠隔地の工場と情報を共有し、さらには工場のみならず様々な業界の現場とも情報を共有することで、単なる生産の効率化だけでなく、そこでやりとりされる情報のスピードや量が、人手に比べると数十倍、数百倍となり、その情報を基に、大きく2つのメリットが生まれてくるとされています。

 一つ目は、生産や流通工程の最適化を進めると、これまでの集中型から、分散型・個別型へと生産サイクルの考え方が変化し、工場はもはや製品を画一的に大量生産する場所ではなくなります。単一製品の大量生産時代が終焉を迎えつつある今、顧客のニーズの多様化を反映した特注品を、低コストの大量生産プロセスで実現する「マス・カスタマイゼーション」の到来です。そのトップバッターをドイツが走ろうとしています。携帯電話やテレビなどを購入する際、ラインアップされた中から選んでいますが、インダストリー4.0が進行していくと、自分の好みを伝えるだけで、量産品と同様の価格でオリジナル製品を購入できるようになります。二つ目は、モデルチェンジの概念が変わります。自動車業界の場合、自動運転制御システムへ移行しつつありますが、ネットで集めたニーズを基にソフトをアップデートすると、即座に新機能を追加できるようになり、毎日のようにモデルチェンジが可能となります。

 ドイツがインダストリー4.0を国策とした背景には、ものづくり王国として世界に君臨してきたドイツの強い危機感がありました。手工業時代からマイスター制度を導入することで世界有数の技術力を養い、高付加価値製品を次々と輩出。世界最大の貿易黒字を稼ぎ出してきましたが、近年、高賃金でコストがかさみ、アジアを中心とした新興国の激しい追い上げに見舞われています。また、ドイツは95%以上が中小企業という町工場の集積国ですが、中小企業は資本力に乏しく、しかしインダストリー4.0に対応するソフトウェアの開発には多大な資本力を必要とするため、政府が音頭を取り様々な業界を巻き込んで標準化を進めているのです。一方、ITを生かした新しい販売モデルで革新的なビジネス展開を進めているアメリカに対し大きな脅威を感じています。膨大なデータを操るアメリカのIT企業がものづくりの分野に進出しつつあり、世界の大手メーカーを下請けのように使う時代も現実味を帯びてきました。ITの技術力を製造業へと応用すれば、ものづくり王国アメリカの時代が到来するかもしれません。

 インダストリー4.0は生産だけに特化するのではなく、顧客との繋がり方も含め、製造業そのものを革新させていくプロジェクトでもあります。ドイツが先陣を切って進めている「マス・カスタマイゼーション」を実現するためには、生産性の向上だけでなく、顧客と工場との関係性を改善していく必要性があります。つまり、インダストリー4.0とは、製造業と非製造業の境目を無くすプロジェクトと言っても良いでしょう。インダストリーという言葉が産業全体を指しており、さらに広義に解釈すれば、農業、教育、医療など、全ての産業を包括するものと言えましょう。実際に農業でも、「農業4.0」というインダストリー4.0の動きにより、大きな転換期を迎えようとしています。インダストリー4.0は業種を問わず、さらには大企業も中小企業も含めて、全ての現場を繋げ、標準化に取り組むことが求められています。全ての産業が連携して相互に繋がるシステム、デバイスが増えれば増えるほど、インダストリー4.0のメリットは高まり、その可能性はまさに無限大です。

 2016年4月、経済産業省とドイツの経済エネルギー省との間で「IoT・インダストリー4.0協力に係る共同声明」への署名を行い、翌月2016年5月にドイツで行われた首脳会議で安倍首相は、「インダストリー4.0を通じて、日本とドイツで第4次産業革命を起こしていく」と決意を述べました。ドイツと日本は先進国の中で、GDPに占める製造業の割合がトップクラスに高いものづくり王国。取り巻く環境は日本も同じですが、現状ではドイツに大きな遅れを取っています。日本もインダストリー4.0の先進国となってドイツと積極的に連携し、将来的には全世界の全ての工場がスマート工場となれば、正真正銘の第4次産業革命の到来と言えるでしょう。大企業は大企業なりの、町工場は町工場なりのインダストリー4.0のあり方を検討する時期に来ており、その流れに乗っていく企業と乗らない企業、さらには乗っていく地域と乗っていかない地域でも、将来その差は広がっていくのではないでしょうか。ドイツと連携しつつ、まずは日本の「スマート工場」の実現に向け、国や地域を挙げて、本格的に動き出す時期に差し掛かっています。

[第118号]経営の軸は心の在り方〜石田梅岩の石門心学

 老舗について研究すると、必ず行き当たる人物がいます。石田梅岩(1685年〜1744年)です。資本主義の原点となる思想を生み出し、今日の企業経営の基礎を築き上げました。ピーター・ドラッカーより約250年も早く経営の本質を、そして、マックス・ウェーバーより約200年も早く経済倫理を説いた、ある種、伝説的経営の神様。松下幸之助や稲盛和夫ら日本を代表する名経営者も石田梅岩を研究し、それに関する資料を残しています。CSR(企業の社会的責任)の重要性が叫ばれてから、書店には石田梅岩を研究した本が増え、テレビでも度々取り上げられるなど、今再び脚光を浴びつつあります。石田梅岩は現・京都府亀岡市の出身で、彼が現役当時その教えは京都と大坂を中心としたその周辺地域に限られていましたが、遺志を継いだ手島堵庵(1718-1786)らが中心となって、その教えを「石門(せきもん)心学」と命名、民衆教化運動を起こして全国に広め、その後も広く国民に継承され、日本の社会に大きな影響を与えてきました。

 石田梅岩が思想家として活躍していた時代は、8代徳川吉宗(在位1716年〜45年)が君臨しており、当時の日本は実は現代と似たような状況にあったのです。江戸時代が始まって以降日本は好景気が続いたものの、石田梅岩が出現した頃は一転して深刻な不況期に。人口も、江戸初期の約1600万人から2倍の約3200万人にまで膨れ上がったものの、不況とともに減少の一途をたどり、今の日本と同様社会活力や労働人口の低減が問題視された時代でした。そのような状況下、石田梅岩は日本社会のこれからのあり方を自ら問い、商人がより積極的に活躍できる社会を構築していこうと考えました。当時は士農工商の制度の中で最下層に位置していたのが商人であり、商人が得た利益は、何も生産せず悪知恵で得たものとの理由で、社会からは軽蔑されていたからです。商業の正当性を主張し、商人にプライドを持たせ、蔑視の対象であった商人の商いを「商人道」として哲学にまで押し上げたのです。この石田梅岩の教えは商人たちの心を捉え、次第に商人の身分は向上していきます。

 「商人の買利天下お召しの禄なり。それを汝、独り売買の利ばかりを欲心にて道なしと云い、承認を憎んで断絶せんとす」。石田梅岩の代表作「都鄙(とひ)問答」の有名な一文です。商人が儲けるのは社会に貢献した報酬であり、これは武士がもらう俸禄と同じで、商人が存在しなければ、社会全体が成り立たないばかりか、国家が滅ぶとまで断言しました。また、商人も社会を担う重要な立場にあり、儒教の教えである「仁義礼智信」を常に心掛け、それを商人道に置き換えて商売を実施すべきであると説きました。「仁」はお客様に対する思いやりの心を持つ、「義」は私利私欲にとらわれず、不正は行わない、「礼」は礼を尽くしお客様を敬う、「智」は学問に励み、知識を得、正しい判断を下す。この4つの心を備えれば、お客様の「信」となって商売は繁盛し、必然的に日本社会も良くなっていくと説きました。後にこの思想は、明治初期、日本資本主義の父・渋沢栄一(1840年〜1931年)に受け継がれ、道徳と商売の一致を見るようになりますが、石田梅岩はその先鞭を付けたのです。

 ピーター・ドラッカー(1909年〜2005年)は、企業の目的は顧客創造であるとし、顧客中心の経営を説きましたが、その約250年前、石田梅岩は「真の商人は先も立ち、我も立つことを思うなり」とし、顧客満足の重要性を説きました。また、ドラッカーは「企業は何のために存在しているのか。それは事業を通じて社会に貢献するためである」と提言していますが、石田梅岩は、企業は社会の公器であるとし、私利私欲を離れた社会奉仕や社会貢献の必要性を訴え、商いの利益は社会貢献の結果であると説いています。マックス・ウェーバー(1864年〜1920年)は、勤勉と倹約の精神を訴え、神から与えられた職業に禁欲的、勤勉に従事して得られた利益は信仰の証であり、神からの救済の一部であるとし、利益はあくまで清貧な生活から得なければならないと説きました。石田梅岩は、勤勉と倹約によって蓄えた富の一部を寄付などを通じて社会に還元することにより、世に尽くす公の行為になるとし、商人が一方的な欲得で金儲けを行っていては社会は発展せず、利益は正直と倹約で得るものでなければならないと説いています。

 ピーター・ドラッカーは経営学者として、マックス・ウェーバーは経済学者として、いずれも世界を代表する学者の一人。両者の思想は、当時は斬新かつ先見性に富んだ発想として受け入れられ、その後も世界中のビジネスマンに大きな影響力を発揮し続けていますが、それよりも200年以上遡って同様の思想を提言した石田梅岩の先見性の高さには、驚くべきものがあります。石田梅岩の時代は主従関係の厳格な封建制度の世の中にあって、その先見性がいかに鋭敏なものであったかを如実に示しており、現代に通用する革新性に富んでいます。石田梅岩の教えは石門心学として、脈々と日本のビジネスマンへ継承され、現代の企業倫理や経営哲学の基礎となっており、日本企業の経営理念の根幹を成しています。しかしながら近年、企業の不祥事は連日のようにマスコミを賑わせており、顧客の利益を顧みない売上至上主義の歪みが表面化しているように思えます。CSRの意識をより一層高めると共に、石田梅岩の教えを再認識することが、今、日本社会に求められているような気がしてなりません。

 日本が明治維新から欧米列強に並ぶまでに急成長した要因の一つとして、近江商人の三方よしの精神を、多くの国民によって継承されたことが挙げられると個人的には考えていますが、その商人道徳としての土台を築いたのが、石田梅岩が説いた石門心学です。適法性(法的に正しい)と道徳性(道徳的に正しい)を区別し、適法性よりも道徳性を重視しました。正直という行為の善悪を決める基準は、自分の内面にあるものであり、その心が許さない行為は、例え人が認めても、例え法律で許されていても、やってはいけないとし、この心のあり方が石門心学の名前の由来となっています。これまでの企業のあり方は、経済効率や目に見えるモノやカネを価値観の中心に据えて判断してきましたが、これからの企業のあり方は、人としてどう生きるかといった倫理観や社会との連携感、いわば「心の豊かさ」を求められる社会になるでしょう。「人を大切にする経営」を今から300年も前に唱え、人間の本性を軸とした経営感を広めた石田梅岩の教え石門心学は、今こそ学ぶべき学問です。

玉川堂銀座店《父の日》ぐい呑製作実演のご案内

玉川堂では、様々な紋様のぐい呑を取り揃えております。今回は銅器に命を吹き込む鎚目入れの実演を致します。父の日の贈り物にいかがでしょうか。

日  時:6月17日(土)

場  所:玉川堂 銀座店(GINZA SIX 4F)

時  間:12:00~17:00

日  時:6月18日(日)

場  所:玉川堂 青山店

時  間:12:00~17:00

職  人:矢竹 純(やたけ じゅん)