[第138号] 未来の日本文化を導くオリンピックレガシー

 今年いよいよ、2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下:東京五輪)が開催されます。昨年11月、メインスタジアムである新国立競技場が完成し、12月にはオープニングイベントが行われました。そして3月26日からは、47都道府県を約4ヶ月に渡って走る、全国参加型の聖火リレーが福島県からスタートする予定となっており、東京五輪の開会に向けての気運が高まってきました。前回1964年の東京五輪では、都市機能が飛躍的に向上し、そのハード面におけるレガシーは今も活かされており、戦後復興を世界へ大きくアピールしました。そして2020年東京五輪は、経済発展の次の成熟した先進国のあるべき姿を世界へ示し、次なるレガシーを日本の未来へ残していく五輪としても注目されています。

 五輪憲章には「スポーツを文化・教育と融合させ、生き方の創造を探求するものである」と記されており、五輪終了後、次大会の開催国は開催までの4年間、自国の文化を世界へPRする文化プログラムの実施が義務付けられています。つまり、五輪は4年に1度の祭典ではなく、4年間継続的に開催する祭典でもあります。過去の五輪では、開催国が経済成長した姿を世界にPRする色合いが強かったため、文化プログラムはあまり重要視されていませんでした。しかし、開催2回目の2012ロンドン五輪は、五輪史上初めて成熟した国が行う五輪としての位置付けとなり、英国政府は国を挙げて文化プログラムを強化。延べ約4300万人が参加し、さらに五輪後も半数以上の文化プログラムが継続されており、「文化王国・英国」を強烈に印象付け、結果、五輪翌年以降も外国人旅行客が大きく増加していきました。

 今回2回目の五輪開催となる東京は、2012年ロンドン五輪と同様、成熟した国での開催として位置付けられており、日本の未来へ向けての文化プログラム推進のあり方に、世界からの注目が集まっています。日本政府は2016年リオ五輪閉幕以降、総額100億円以上の経費を計上させ、全国各自治体での多種多彩な文化プログラム「東京2020文化オリンピアード」を実施。新潟においても多数のプログラムが実施されましたが、五輪後も継続して推進体制を構築していこうと、「東京2020文化オリンピアード」と並んで「beyond2020プログラム」が実施されており、その認証組織として「アーツカウンシル新潟」が設立されました。そして、今年4月から五輪閉幕までの期間、文化プログラムの総決算とも言うべき「東京2020 Nipponフェスティバル」の開催が予定されており、東京五輪へ向けての機運がいよいよ熱を帯びて高まっていきます。

 2012ロンドン・パラリンピックは、2008年アテネ大会の3倍増となる約2200万人という過去最多の観客動員数を記録し、パラリンピック史上最も盛り上がった大会でもありました。そのパラリンピックに連動させた文化プログラムが「アンリミテッド」です。これは障害者アーティストの活動支援や障害者向けの文化活動支援の事業で、世界中の障害者に対して勇気と希望を与えたことから、現在も継続して展開されており、ロンドン五輪のレガシーとして世界的に認知される存在となりました。日本政府はこの「アンミリテッド」の精神を継承しつつ、東京五輪の文化プログラムに於ける障害者用のプログラムに一層の充実を図り、東京五輪の文化レガシーとして日本の未来へ継承する方針です。

 国際オリンピック委員会は、オリンピックが開催都市と開催国にもたらす長期的・持続的効果を「オリンピックレガシー」として、次世代へ継承させることを提唱しています。このレガシーというと、五輪用に建設した建物を次世代へ活かすというハード面に焦点が当たりがちですが、東京五輪は文化プログラムにおけるソフト面にも焦点を当てていきたいものです。オリンピックとは、スポーツと文化を融合した「文化の祭典」であると明確に位置付けられています。2020年東京五輪は、1964年東京五輪で生まれたハード面のレガシーを継承しつつも、今一度日本文化を見直し、それを誇りに想い、日本を「文化王国」として成長させていくことが求められているのではないでしょうか。それが2020年東京五輪のレガシーとして次代へ継承され、将来の国力増強に繋がっていくものと考えています。