[第75号]デザインの祭典、東京デザイナーズウィーク

 「東京デザイナーズウィーク2014」は、10月25日(土)から11月3日(月)の10日間、東京の明治神宮外苑・絵画館前をメイン会場に開催されます。デザインビジネスの発展やデザイン文化の創造、次世代デザイナーの育成に取り組むデザインアソシエーションNPOの主催により、今年で29年目を迎えます。日本最大のデザインイベントであり、昨年は約11万人を動員。建築、インテリア、プロダクト、グラフィック、アートなど、その分野の専門家が、流通ビジネス、テストマーケティング、作品発表などを目的に最新作を発表しますが、若手デザイナーのPRの場にもなっており、新製品の発掘の場だけでなく、新人発掘のためのイベントとしても効力を発揮しています。

 世界最大のデザイン見本市「ミラノサローネ」をはじめ、国内では東京ビッグサイトなどで開催されるデザイン関連の見本市は、企業の出展が多いことに対し、東京デザイナーズウィークは、個人作品の発表を中心に構成されています。しかも、日本を代表する世界的デザイナーから学生に至るまで幅広いクリエイターが出展しており、トップデザイナーはその圧倒的な存在感を発揮し、また若手デザイナーにとっては自身をアピールする絶好の機会でもあります。さらには、業界関係者のみが集結するデザイン関連の見本市と異なり、東京デザイナーズウィークの見学者は、ビジネスマンから子供まで幅広い年齢層であることも特徴。絵画館前という絶好のロケーションも、デザイナーズウィークの雰囲気をより一層引き立たせています。

 今年のテーマは「Creative FeS 天才万博」。様々なジャンルの「天才」たちによる作品展示、トーク、ワークショップなど、多数の企画が開催されますが、私個人的に注目している企画は、「北斎漫画インスパイア展」です。葛飾北斎の「北斎漫画」は、富嶽三十六景と並んで北斎不朽の名作と賞され、日本のみならず世界中が大絶賛した作品。1830年代、磁器や陶器などの輸出の際、緩衝材として浮世絵と共にたまたまヨーロッパへ渡り、それを見た関係者が独創性の高さに驚き、瞬く間にヨーロッパ美術界に浸透。ヨーロッパ美術に大きな影響を与え、ジャポニズムのきっかけになったとされています。天才・葛飾北斎による「北斎漫画」は、現代の天才の手によってどのように表現されるのか、とても興味深いものがあります。

 明治神宮外苑のメイン会場以外にも、周辺のギャラリーやショップなどで、様々なイベントが開催されます。世界的インテリア雑誌「エル・デコ」では、東京デザイナーズウィークに合わせて、「エル・デコ・デザインウォーク」と称し、青山を中心とした都内のインテリアショップを廻り、インテリア散歩を楽しもうという企画を毎年開催。今年は玉川堂青山店も加わり、約90ショップがエントリーしました。玉川堂青山店ではハロウィンのシーズンに合わせ、弊社を代表するデザイン「南瓜形」をシリーズ化させ、茶器・酒器の南瓜形最新作を展示販売します。青山を中心にデザインイベントで賑わうこの期間、デザインに関わるあらゆるショップが企画展を開催し、街全体がデザイン一色に染まります。

 デザイナーズウィークは、日本だけのイベントではありません。世界約60都市で開催されており、今では、デザインビジネスに欠かすことのできない存在として認知され、デザイン啓蒙の世界的イベントとして大きな役割を果たしています。ミラノサローネの期間中は、ミラノ市内約1000ヶ所におよぶ数多くのイベントが開催されますが、ミラノのデザイナーズウィークもミラノサローネ期間中に開催されます。東京デザイナーズウィークは、ミラノとの協働により、日本国内の美術系大学や専門学校の卒業制作品を、ミラノのデザイナーズウィークにて発表するとのこと。若手デザイナーの新しいビジネスチャンスに留まらず、日本の新しいデザインの息吹を発信する素晴らしい機会でもあり、毎年の恒例企画になって欲しいものです。

 芸術の構成要素、デザイン・アート・ミュージックの3つのカテゴリーの中で、最も人を動員できるのはミュージック、その10分の1の規模でアート、さらにその10分の1の規模でデザインのイベントと言われていますが、ビジネスの分野では圧倒的にデザインの需要が高くなります。そのデザインの需要は年々高まっており、デザインはビジネスチャンスを狙える一方、企業経営や人々の生活の中には、必ずしもデザインが浸透しているとは言いがたく、さらなる啓蒙活動が必要です。デザインをより身近に感じることが出来るイベントして、東京デザイナーズウィークは絶好の機会。訪れる誰もが五感を刺激され、インスピレーションが得られる東京デザイナーズウィークに、より多くの方々から足を運んで欲しいと思っています。