[第73号]南青山・骨董通りにて玉川堂直営店開業

 8月25日(月)玉川堂初の東京直営店「玉川堂青山店」が、南青山の骨董通り沿いにて開業いたします。物件は外国人にも人気の高い南青山エリア、かつ、根津美術館から表参道駅間の高級ブランドが点在する南青山5丁目に狙いを定め、青山の不動産会社のご協力のもと相応しい物件に出会い、この度の開業にいたりました。玉川堂青山店の開業は、2016年玉川堂創業200周年事業の一環ですが、自社製品をお客様の手に渡るまでの全ての業務に対して、全責任を持つことがこれからの製造業のあり方と考えており、マーケティング→デザイン→製造→販売という一連の流れを、自社で一貫して行なうという玉川堂の理念を具現化したプロジェクトでもあります。

 徳川家康の重臣・青山忠成が、現在の青山を屋敷地として拝領したことに由来し名付けられたという青山。青山一丁目は、その青山家跡地に作られた青山霊園があり、その歴史を今に伝えています。東京大空襲で青山の全域が焼け野原と化しましたが、戦後、急速に復旧が進み、特に東京オリンピックの際に道路拡張工事が行われ、青山通りが大きく整備されたことから、青山の活性化はより一層速度を増していきます。青山通りから一歩路地に足を踏み入れると、日常の生活が息づく閑静な住宅地が広がり、場所によってはブランドショップの直ぐ脇に、生活感漂うアパートが今なお残っていることにしばしば驚かされます。また、青山は戸建てを構える高級住宅地としても人気が高く、多様な価値観が共存する気風にこそ、青山の魅力があると思っています。

 玉川堂青山店が開業する骨董通りは名前の通り、1980年代の全盛期に約80軒の古美術店が軒を並べる骨董街でした。東洋古美術を所蔵する根津美術館に近いことや、進駐軍関連の需要を見込み、古美術品を扱う店が自然と集まるようになったといいます。現在は数えるほどのお店しか残っていませんが、骨董通りの名付け親は「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士として全国区の知名度を持つ骨董通りの古美術商・中島誠之助氏です。かつては都電の走る「高樹町通り」と呼ばれ、現在の正式名称は「南町通り」です。骨董通りの呼称が浸透し始めたのは1980年代後半、女性向けのブティックが骨董通りに進出し始めた頃と言われ、ファッション誌や情報誌などが「骨董通り」の名称を使い始めたことにより、骨董通りの名称が一般的に使用されるようになりました。

 骨董通り周辺はカフェと美容室が年々増え続け、全国有数の激戦区となっていますが、カルチャー指数の高さも特徴として挙げられます。界隈には根津美術館や岡本太郎記念館などの文化施設が建ち並び、多くの美術愛好家や外国人観光客が訪れます。根津美術館は、鉄道王・東武鉄道の創始者である根津嘉一郎氏によって収集された東洋古美術品が蔵品の基幹を成しており、茶室が点在する約2万㎡の庭園では、四季の折々の景観が楽しめ、青山であることを忘れさせます。そして、すぐ近所には岡本太郎氏の邸宅兼アトリエをそのまま利用した「岡本太郎記念館」があり、村上春樹氏が命名した記念館内のカフェ「ア・ピース・オブ・ケイク」は人気スポットの一つです。その他、周辺の美術ギャラリーでは独自性高い企画展が行われており、アートを探索するエリアとしても高い人気を誇ります。

 玉川堂青山店が入居する住友南青山ビル1階には3つの店舗があり、玉川堂の他、歴代フランス大統領も愛用したフランスを代表する靴ブランド「J.M.ウェストン」、世界の高級眼鏡ブランドを取り揃える「クレイドル」が入居しています。表参道駅寄りの骨董通り沿いに位置し、歩道には樹木が配置され、落ち着いた雰囲気が漂っています。玉川堂青山店は、登録有形文化財に登録された燕本店の伝統的な日本家屋とは異なり、店舗デザインは全く新しい玉川堂を発信すべく、店舗入口の外観を銅製パネルで覆い、内装デザインも鎚目をイメージ、接客テーブルは銅器の鎚目が最も美しく見えるよう内照式アクリル製としました。店舗デザインだけでなく、新しいロゴマークも鎚目をイメージし、「打つ。時を打つ。」というコンセプトの見える化を図りました。

 鎚起銅器は社内で開発した世界無二の着色技術により、使うほどに色合いが深まり光沢を増します。玉川堂青山店から徒歩5分ほどに位置する根津美術館所蔵の中国製銅器は、数千年の時を経ても、今なお青山の地で存在感を放っているように、銅器の生命力は無限大です。お買い上げになったお客様が愛着を持って銅器を代々受け継いでいただき、時を刻んでいただくことが、私たち玉川堂の願いです。「打つ。時を打つ。」「私たちが作った銅器を、私たちのお店で、私たちが丁寧に販売する。」お客様から代々愛され続け、時を刻む銅器を生み出し、鎚起銅器の文化を継承・発展すべく、より一層精進してまいります。皆さまからの玉川堂青山店ご来店を、スタッフ一同、心よりお待ち申し上げております。