[第59号]ランニングが人と地域を動かす

 日本国内における成人のランニング人口は、昨年1000万人を超えたとのこと。2006年の調査では600万人でしたので、わずか6年間でランニング人口は400万人も増加したことになります。私も朝6時からランニングを行なっており、始めたのは2009年ですので、まさにランニング人口急増のタイミングで始めた一人です。最近では弊社の労働衛生管理の観点から、スタッフの健康を増進すべくランニングを奨励。さらには、社内の絆を深めていくことも目的にランニングクラブ「チーム玉川堂」を結成し、社内行事として新潟県内のマラソン大会にも参加しています。県内企業のランニングクラブとの異業種交流も生まれており、これからもランニングをベースとした社内行事を推進して行きたいと思っています。 
 ランニング人口増加の最大の要因は、2007年に始まった日本最大のマラソンイベント「東京マラソン」です。過酷やキツイといったマラソン大会のイメージを一新させ、銀座や浅草などの観光名所を颯爽と走り、楽しむことを目的としたファッショナブルなマラソンを日本全国へ発信。仮装ランナーの存在もクローズアップされ、東京マラソンの影響を受けて仮装ランナーの存在は、今や全国各地のマラソン大会には欠かせない存在となっています。この東京マラソンが起爆剤となり、全国各地で開催されているマラソン大会の参加者が急増しています。市民参加型の大規模スポーツイベントが、都市のPR、地域活性化に役立つことを強く認識させ、地域に人を呼び込むための重要な戦術として位置付けられるようになりました。 
 近年の観光は「観ること(Seeing)」から、訪れた場所で何らかの活動を「すること(Doing)」へと変わりつつあります。その活動の一つがマラソン大会です。1981年から続く「ロンドンマラソン」は、タワーブリッジやバッキンガム宮殿などの観光地を走ることで世界的に人気の高いマラソン大会です。また、マラソン観光を積極的に推進させた好事例として、日本でも馴染みの深いマラソン大会が「ホノルルマラソン」。航空会社がスポンサーとなり、日本人だけでも毎年数万人が参加しています。このように、マラソン大会参加のために旅行をすることをマラソン・ツーリズムと言い、マラソン・ツーリズムを対象としたビジネスは急成長を遂げており、今後も需要拡大が見込める分野と言えるでしょう。 
 さて、ランニングの効果として、脂肪を燃焼させ、コレステロールや中性脂肪などの数値改善に効果を発揮しますが、効果を十分に発揮出来る時間帯は早朝です。夕食を摂取して8時間以上経過している早朝の時間帯は、インスリン濃度が高く、身体は脂肪をエネルギーとして使いやすい状態となっているため、他の時間帯に比べると脂肪燃焼効果が高くなります。さらに、早朝にランニングを行うと、その後も代謝の高い状態が続くため、通勤での徒歩や階段の昇り降りでも、脂肪が効果的に使われやすくなります。食習慣も重要で、まずは野菜を先に食べて、その後炭水化物などを摂るという習慣を身に付けるだけでもダイエット効果が現れますが、早朝ランニングと組み合わせると、その効果は絶大です。 
 以前「日経ビジネス」において「仕事に効く、能を鍛えるランニング」という表紙のタイトルで、日々走っている経営者の意見を脳科学者の検証をもとに、ランニングの効果が特集されていました。「インスピレーションが得られ新しいアイディアが次々と浮かぶ」「経営目標の達成に必要なセルフコントロール能力が高まる」「考え方が前向きになりネガティブな気持ちが吹っ飛ぶ」など、継続すればするほど、日々のビジネスに大きな成果が現れると指摘しています。そして、走る時間帯を強制的に割り当ててしまう「時間天引き方式」を提唱。これもセルフコントロール能力を訓練する手段であるとしています。 
 近代医学の進歩によって国民の寿命は格段に延びていますが、それは同時に莫大な医療費の増大を意味し、介護にかかる費用も年々増加しています。ランニングブームをきっかけに、国民の健康が促進され、医療費や介護費を抑えることが出来れば、このブームを後押ししない手は無く、このブームを契機に、ランニング・ライフスタイルのある社会を目指していきたいものです。ランニングは身体の活性化だけではなく、職場や地域の活性化にもつながり、ランニング人口が増えるほどに日本経済は活性化されていくと言っても、決して大げさな表現ではないでしょう。身も心も変革させ、あらゆることに好影響を及ぼすランニング。早速、皆さまも始めてみませんか?