[第54号]ダイナミックな経済成長を続ける香港

   謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。この新しい年が、皆様にとってさらによい年でありますよう、心よりお祈りいたしております。2016年の弊社創業200周年まで、あと3年となりました。創業200周年イベントを国内外で計画しており、それに向け、海外事業展開もさらに積極的に着手するほか、国内事業においても、今年は都内で大きな事業を計画しています。詳細は別途、メールマガジンにてご案内させていただきますので、今年も引き続きご支援を賜りますよう、なにとぞ、よろしくお願い申し上げます。

   香港が中国に返還され、今年で16年が経過しました。返還当初、社会主義国である中国に返還されることで、香港が築いてきた自由な経済体制が脅かされるとの懸念がありましたが、それは杞憂に終わっています。昨年11月、香港貿易発展局様と香港投資推進局様へお伺いし、現在の香港市場についての詳細をお聞きしてきましたが、あらためて香港市場の可能性の高さを認識しました。現在の香港市場の概要を3点挙げると、1.自由貿易のため、世界各国の有力企業がこぞって香港にてビジネスを開始。2.中国大陸を始め、世界各国の富裕層が大挙して観光目的で香港入り。3.税負担が非常に少ないという利点を活かし、香港に居住する外国人が急増。香港は、ビジネス、観光、居住と、今後も国際都市として、さらなる成長が期待されます。

    香港市場のキーワードは「コンパクト」です。香港は東京都の半分ほどの面積に、人口約700万人が密集。香港は山岳地帯を多く抱えているため、人口の単純密度は東京23区よりも低いものの、可住地における人口密度は世界トップクラスで、東京23区の約3倍という超過密エリア。香港内での移動が短く済むだけでなく、交通機関が非常に発達しており、スピーディーな移動が可能です。また、近年、香港の高い将来性に目を付けた世界各国の一流ブランドや、中国本土の富裕層などが高額物件を買いあさっている影響によって、香港の地価は年々著しく高騰。地価も世界トップクラスとなっています。これも香港のコンパクト市場がもたらす影響と言えるでしょう。

   香港の交通の便の良さは、市街地だけではなく、グローバルハブ空港の役割を担う香港国際空港にも同様のことが言えます。世界130国以上の都市と結ばれ、5時間以内で渡航可能な人口は、世界総人口の約半分というデータがあります。航空貨物の取扱数も世界有数で、物流機能を含む物理的な優位性が高く、さらにはビザの条件が緩いため、ビザ無しでの長期間滞在が可能。駐在員の派遣先としても有効活用されています。そして、香港はビジネス・オペレーションに対して、行政からの規制やコントロールが少なく、自由な為替管理制度、整備された法システムを有することから、ビジネス拠点として、毎年多数の海外企業が香港へ進出しており、米国マスコミの調査では、経済自由度ランキングにおいて、香港が17年連続世界一の座を維持しています。

   さて、著しいGDP成長率を誇る中国。世界中のあらゆる業界から熱い視線が注がれているのは周知の通りです。しかし、商習慣や価値観の違い、法的規制、知的財産権や無形財産保護への対策の遅れなどの理由により、狙い通りのビジネス展開が出来なかったり、苦労するケースは、世界はもとより、私の地元・燕三条でもよく耳にする話です。そこで、日本の多くの企業が将来の中国展開を視野に入れ、戦略的に取り組んでいるのが、香港市場でのビジネス展開です。日本製品を受け入れる土壌があまり整っていない中国市場へ直接アプローチするよりも、まずは香港市場で経験と実績を作り、万全な体制を築いた上で、中国本土へ進出した方が得策であるとの考え方です。

   香港では日本製品に対する信頼が厚く、また、偽物が出廻る中国本土に対し、香港市場では偽物が極めて少なく、本物志向であるという点においても魅力な市場です。香港では知的所有権や無形財産の保護に対して、厳格な体制が取られており、コピー製品が香港市場に流されないよう万全な対策が成されています。そして、香港は輸入規制が少なく、低率でシンプルな税制度によって国際商取引を円滑に進めやすい環境にあります。何といっても、関税が掛からないという点は最大の魅力。所得税も16.5%と低く、消費税、相続税、贈与税も掛かりません。これらの税効果を上手く活用すれば、事業を運営するための効率的な資金調達や資産の形成、運用が出来、低リスクでの海外事業展開が可能となります。

   日本からの交通便の良さ、香港の国際性と自由貿易、高い教育を受け経験を積んだ労働力、確立された法治制度といった香港の様々な利点は、我々、日本の地場産業メーカーとしても大変魅力的です。このように、海外事業を低リスクで展開出来るほか、香港でのビジネス展開は、中国本土だけではなく、欧米進出への大きな足掛かりにもなり、まさに世界展開への登竜門と言えます。高度なインフラを有し、コンパクトながらダイナミックな経済成長を続ける世界有数の国際都市・香港。今後も、さらに洗練された国際都市としての成長が見込まれます。もはや、香港市場を攻めずして、世界市場は語れないほどのビジネス拠点地であり、香港市場を攻めずして、日本の地場産業の振興は語れないと言っても過言ではないでしょう。