佐渡の文化風習は独特です。江戸時代から栄えた金銀山は幕府の直轄地であり、加えて北前船での海運業による交易によって、全国各地の文化が交わりました。また、佐渡は京から配流された貴族や文人などが都の文化を伝えており、現在でも独自の言語、伝統芸能などが受け継がれています。特に能は、能の大成者である世阿弥が配流された影響から、江戸時代には200を超える能舞台があり、現在も約30の能舞台が現存しています。そして、佐渡を代表する名所・佐渡金山は、日本最大の金山であり、鉱石に含まれる金の含有率と手作業での発掘技術は世界一とも言われています。重要な国策として大規模な発掘が行われていたため、その史跡の数々は圧巻。明治期にはフランスやドイツの最先端技術を採用して日本の鉱業界をリードし、日本の近代化に大きな役割を果たしました。
佐渡金山は、平成27年（2015年）の世界遺産登録申請を目標に準備を進めていますが、登録されれば佐渡のみならず、新潟県全体の経済発展が見込めるものの、同じく平成27年には北陸新幹線開業によって、新潟県の経済衰退の恐れが指摘されています。現在、東京から北陸へ向かうためには、一旦、上越新幹線を利用し、越後湯沢駅で特急列車に乗り換え北陸方面へ向かいますが、北陸新幹線が開業すれば、上越新幹線利用の必要はなくなり、上越新幹線の乗車率は激減、運行本数の減少は避けられそうにありません。このような状況下、新潟の経済発展のためには、新幹線の終点である新潟駅を行き止まりにせず、佐渡へ流れるような観光ルートを作り、多くの方々に新潟県入りしていただくことが、新潟県の喫急の課題となっています。
佐渡の観光客は、平成3年の121万人をピークに年々減少し、ピーク期からは半減。今なお、その傾向に歯止めがかからない状況が続いています。その原因として、旅行形態が団体旅行から個人やグループ旅行に対応できなかったこと、地域ブランドとしての発信力が弱かったことなどが挙げられます。佐渡金山が「世界遺産」に登録されれば、世界的に注目されることになりますが、それはあくまで副産物として捉え、今後は、顧客別ニーズの分析と戦略への展開、佐渡の魅力を打ち出した観光振興策などを、今まで以上に推進していく必要性があります。また、産業振興策として、佐渡の地場産業である食品加工業の国際ブランド化、朱鷺の放鳥を契機に棚田を再生し、朱鷺と共に生きる国内最高品質米を育成、佐渡米の国際ブランド化も期待したいところです。
観光産業を主体としている佐渡には多数の温泉宿や食事処がありますが、団体旅行向け対応の名残があり、総じて安価な設定になっています。安価のままでは他の観光地と差別化が図れず、佐渡の魅力が埋没してしまい、リピート客低下を招きます。ここはむしろ、個人向けにターゲットを絞り、温泉と食の高級化を啓蒙させ、高価格でも満足度の高い観光地とし、ミシュランガイドのように、遠方から「わざわざ行く価値のある」温泉宿や食事処が増えて欲しいものです。佐渡には尾畑酒造様、北雪酒造様など、世界市場で活躍されている著名な蔵元も存在し、佐渡産海の幸と、佐渡産日本酒とのマリアージュを高いレベルで追求すれば、世界の食業界に注目されるポテンシャルを秘めています。
そして、佐渡の伝統芸能は全国屈指の存在。特に能は、人口あたりの能舞台数は全国一で、日本国内にある能舞台の３分の１が佐渡に集中し、日本では類を見ないほど能が盛んな地域です。また、佐渡を拠点に国際的な公演活動を展開するプロ太鼓集団「鼓童」の存在も際立っており、世界から注目されている伝統芸能。これら佐渡の伝統芸能の国際化をより推進させると共に、世界各地の伝統芸能を招聘し、伝統芸能の世界的な「聖地化」を図りたいものです。佐渡は佐渡金山が存在し、さらには、自然環境も、伝統芸能も豊かな島。食材や日本酒の魅力も極めて高いものがあり、観光地としての潜在能力は日本有数と言っても過言ではありません。観光地としての高級化、国際化を積極的に推進させることで、日本に「SADO ISLAND」ありと、世界から注目されることでしょう。