[第13号]地域の魅力を再認識する芸術祭

今年の新潟は、2つの世界最大級の芸術祭で盛り上がっています。「水と土の芸術祭2009」(新潟市)と、「大地の芸術祭・越後 妻有(つまり)アート トリエンナーレ2009」(十日町市・津南町)です。新潟の風土や歴史、地域の人々との交流の中から、さまざまな屋内外のアートを製作、展示することによ り、アートの力で地域の魅力を再認識していこうと、今、新潟は新たな取り組みを行っています。

「水と土の芸術祭」と銘打ったアートイベントは、日本最大級の水量に恵まれた信濃川と阿賀野川の流れる新潟市が舞台となります。川と水との度重なる大規 模な水害と幾度と無く闘い、そして共に生きてきた歴史を持つ新潟市。この水と土の文化を次世代へ引き継ぎ、そして国内外へと発信すべく、世界中のアーティ ストと新潟市民が協働で製作した野外アート71作品が、新潟市内各地にて展示されています。

「大地の芸術祭」は、世界有数の豪雪地帯・越後妻有地域を中心に展開され、「人間は自然に内包される」を基本理念に掲げ、3年に一度開催。今年が4回目 の開催となります。こちらも世界中のアーティストと地域の方々との協働で350作品を製作し、里山風景と素晴らしい調和を見せています。現代アートの国際展は、都会での開催が一般的ですが、山間地を舞台とし過疎高齢化した地域をアートの持つ力によって活性化させるという試みは、現代アート展の新しいモデル として、世界的にも注目を浴びるようになりました。

いずれの芸術祭も、作品は一つの会場に集約されているのではなく、各地に点在されているため、アートを求めて里山を、または川沿いを巡りながら鑑賞しま す。芸術祭を歩き廻り、新潟の美しい大自然を歩く中で五感が解放され、アーティストや地域の方々の想いが詰まった作品からは、モノを想像する・創造する力 を素直に感じることができます。

「大地の芸術祭」の総合プロデューサーで、瀬戸内海・直島にて「ベネッセアートサイト直島」を運営するベネッセCEO・福武總一郎氏は、「経済は手段で あり目的は文化。奈良、京都のように千年経過して残るのは文化と芸術だけ。有るものを活かし、無いものを創るという地域再生を通じて文化を再定義したい」 と語っています。

今、新潟で開催されている2つの芸術祭には、人と人、そして、人と地域を結び付ける大きな力を持っており、新潟の文化を甦らせ、地域の魅力を再認識させ る格好の機会となっています。芸術祭に足を運べば作品周辺は開放感に満ちており、隣り合わせた地域住民、アーティスト、サポーター、鑑賞者などとも会話が はずみ、様々な方との出会いが生まれます。アートは人や地域を豊かにする役割をし、場のメッセンジャーとして、これからも様々な世界の扉を開く役割を果た していくことが期待されます。