[第14号] 松江に受け継がれる茶の湯の文化

京都、金沢と共に「三古都」と呼ばれている松江。全国屈指の茶処、菓子処ですが、その背景には、松江藩7代藩主・松平不昧公(1751〜1818)の影 響を大きく受けています。不昧公は茶人としても活躍し、自ら「不昧流」を大成させ、松江に茶の湯の文化を啓蒙させました。大名茶人としての活躍により、松 江城下には茶道具の名品や銘菓が数多く生まれ、今も松江の伝統文化として根付いています。

城下町の風情を色濃く残す松江の街には、和菓子の名店が軒を連ねています。松江は、京都、金沢と並ぶ日本三大菓子処として知られ、人口一人当たりの和菓 子の消費量は松江が全国一。菓匠の水準は極めて高く、特に松江が誇る和菓子「山川」は、金沢の「長生殿」、長岡の「越の雪」と共に、日本三大銘菓の一つと して全国の和菓子愛好家の方々から親しまれています。

松江はお茶も大変盛んな地域で、お茶の消費量は全国平均の約5倍。日本茶産地以外の地域としては、異例の消費量です。また、松江の特色として、家庭で抹 茶を楽しむ習慣が生活の中に溶け込み、一般企業がお茶を出す際、抹茶を出すところも珍しくありません。毎年10月に開催される「松江城大茶会」は、松江市 の一大イベントで、京都市「二条市民大茶会」、金沢市「兼六園大茶会」と共に、日本三大茶会の一つに数えられています。

松江は、不昧公ゆずりの文化を永年に渡り愛し続け、日本茶と和菓子を基盤とした文化がしっかりと形成され、日本の古き良き文化を継承する心が街全体に染 み渡っている、稀有な地域です。学校教育においても茶の湯が実践され、松江には日本茶と和菓子の伝統文化を育てていくという自負が感じられます。学生が茶 の湯に親しむことは、故郷の誇りへと繋がるだけではなく、将来、グローバル社会に対応するための日本人としての心構えを学ぶことにもなり、これからの教育 のあり方の一つとして、注目すべきことであると思いました。

先日、松江市内唯一の百貨店「一畑百貨店」様にて弊社催事があり、その際、松江市内の茶室に身を置き、一服のお茶を楽しみました。松江の歴史と文化、そ して四季を感じ、わずかな時間ながらも、安らぎと平穏の時を味わい、ここまで五感で深く感じ入ることは、日常なかなか体験出来ないことです。日本の文化や 人間関係が希薄になりつつある現代社会において、茶の湯の世界は日本人の心を育み、また、癒す文化として、大いに期待するものがあると、松江の旅を通じ、 あらためて体感した次第です。