[第15号]シャンパーニュ地方の際立つブランド戦略

シャンパンは飲む人を幸福な気分にさせる発泡酒ワイン。パーティーなど祝祭の象徴として、世界各国で愛飲されていますが、近年はグラス注文にて気軽に シャンパンを楽しめるレストランやバーが増え、クリーミーで繊細な泡立ちと、品格ある豊かな香りを求め、シャンパンの人気は年々確実に高まっています。

一方、地域ブランド構築の必要性が問われている現在、シャンパンの産地・フランスのシャンパーニュ地方は、地域ブランドのモデルケースとしても注目され ています。シャンパーニュ地方のブランドに対する意識の高さは、世界の地場産業において際立った存在であり、地域ブランド「シャンパーニュ」の地位を高め るための戦略が、徹底的に成されています。

まず、シャンパンを名乗れるのは、シャンパーニュ地方で作られた発泡性ワインのみです。シャンパーニュ産のブドウを使用し、栽培から醸造、そして瓶内発 酵まで全てが厳密に行われ、地域で定めた基準をもとに、最終的に品質検査を受けて合格したものだけがシャンパンの名を名乗り、市場へ流通させることが出来 ます。

これは同じフランス産でも、シャンパーニュ地方以外で製作された発泡性ワインは「ヴァン・ムース」と呼ばれ、シャンパンとは区別されています。以前、他 国において、シャンパーニュ地方と同様の醸造方法を取った発泡性ワインに対しては、「シャンパーニュ方式」という表示がされていましたが、現在はそれさえ 許されなくなっています。

シャンパーニュ地方は、寒さの厳しい北フランスに位置し、実はワインの生産にはあまり適している地域とは言えません。通常のワイン造りをしていては、フ ランスが世界に誇るワインの名産地・ブルゴーニュ地方やボルドー地方には勝てないという厳しい現実があったため、250年も前から産地内の協働により、産 地独自の発泡性ワインの醸造技術を高めてきました。産地の知恵を結集させ構築させたその高度な醸造技術は、他地域の追随を許さず、発泡性ワインで世界最高 峰の地位を揺るぎないものにしています。

そしてシャンパーニュ地方は、どのメーカーも広告やデザインに経営資源を投入し、ワイン業界では異例の宣伝広告費を掛けていると言われています。シャン パンの広告を、ファッション雑誌などで見かけたことがあるのではないでしょうか。ボトルやパッケージなどのコミュニケーション・デザインにも力を入れ、そ の洗練されたデザインには、目を見張るほどの美しさがあり、シャンパンのブランドイメージを引き立たせています。

限られた地域で世界中のシャンパン需要を満たさなければならないシャンパーニュ地方。しかし、生産高を上げるための農法も農薬も地域では認めておらず、 代々受け継がれてきた伝統的な手作業にこだわり、「質」を追求する姿勢を打ち出しています。モノづくりの戦略も、ブランド戦略も、全ての面において産地全 体が高い意識でまとまっており、これからの地域ブランド構築の参考事例として、今後、ますます注目を浴びていくことでしょう。