[第16号]新時代へと動き出す和服業界

和服は長い歴史の中で受け継がれ、育まれてきた日本の伝統文化です。日本の生活や文化に溶け込みやすく、日本人の体型や顔立ちによく映り、また、四季の ある日本の気候風土に適しています。長い年月を経ても着用することの出来る知恵が活かされ、親子代々に渡って受け継がれる、日本が世界に誇るスローファッ ションです。

私もパーティーの席や海外での見本市では、和服を着るように心掛けていますが、和服の魅力は、何と言っても織物技術と色彩感覚の素晴らしさ、そして、日 本模様の美しさ。和服には日本人の美意識が凝縮されています。和服を着ている時は気が引き締まり、日本人としての誇りを感じることが出来ます。

しかしながら、和服は高価なファッションであり、敷居が高いというのが一般的な解釈です。その問題点の一つとして、和服業界の流通システムが挙げられる と思います。和服業界では、問屋を通すことが慣例になっており、流通の段階で価格が大きく上乗せされるだけでなく、作り手と消費者の接点が無いため、消費 者の生の声が作り手に伝わっていないケースが多く見受けられます。これは和服業界に限らず、地場産業全体にいえることでもあります。

このような現状を打破すべく、既存の流通を改革しようとするメーカーが出現するようになりました。その事例の一つが、福岡を代表する伝統工芸・博多織の メーカーが経営する「awai」というお店です。昨年、東京・六本木のミッドタウン付近に直営店をオープンさせ、メーカー直販のメリットを活かした高品 質・低価格の和服を実現。30代男女をターゲットとし、和服文化の啓蒙を図っています。

一方、織物産地内の企業が連携し、織物技術を応用した新たな商品を開発する動きも活発化しています。博多織は、産地内企業が連携し「21世紀博多織 JAPANブランド」を発足。伝統的な博多織の技術を活かしながら、デザイナーと連携し、ドレスなど和装以外の新商品を開発しています。また、京都の丹後 織物でも、産地内企業が連携して「丹後テキスタイル・ネクスト」を発足し、アパレルメーカーとの協働で、丹後が誇る名産・白生地によるスーツ開発などに取 り組み、海外市場開拓を目指しています。

このように和服業界では、既成の枠組みを見直し、流通の仕組みを変えることによって、和服文化の啓蒙を図る動きと、伝統的な織物技術を活かしながら新し いファッションを創出していく動きが、全国各地で起こっています。日本人は和服の魅力を再認識し始め、世界市場では、日本の織物の素材と技術を活かしたド レス、スーツ、バッグ、テーブルクロスなどの新たな製品に大変な興味を示しており、和服業界のこれからの展開には、大いに注目すべきものがあります。

今、セの中が150年ぶりに日本文化への回帰の動きが起きており、これから世界のあらゆる市場を日本文化が覆っていくことになると考えられています。目 まぐるしく生活様式が変化しても、古来から伝わる和服文化は、いつまでも日本人の心に息づき、また、時代に対応しながら、新たなる時代を迎えようとしてい ます。