[ 第17号 ]燕三条の「完全」地産地消のレストラン開発事業

東京や京都の名店で修行したシェフが地元の田舎町でレストランを開業する。あるいは、ヨーロッパの名店で修行したシェフが帰国し、あえて地方でレストラ ンを開業する。今、食の業界は、都会から地方へという動きが確実に広がりつつあり、地方ならではの食材を生かした料理を提供し、話題になっているレストラ ンが増えてきました。このようなレストランの駐車場は、県外ナンバーの車で溢れ、わざわざそのレストランで食を堪能したいがために足を運んでいます。

その代表格といえるのが、山形県鶴岡市のイタリアン「アルケッチャーノ」です。山形・庄内地方の食材や生産者、そして庄内の土地に寄せる熱い想いを凝縮 させたイタリアンが口コミで広がり、今や全国で最も注目される地方のレストランとなりました。「アルケッチャーノ」の料理は、イタリアンの命というべきバ ター、生クリーム、ニンニクなどは必要最小限にとどめ、食材本来の旨味と風味を活かした調理法で、限りなく和食に近いイタリアンです。採れたてのフレッ シュな素材感を活かし、自然はイタリアンの新境地を切り開くことに成功していると思いました。

また、奈良・東大寺門前のイタリアン「イ・ルンガ」は、イタリアにて日本人で初めてミシュラン星を獲得したオーナーチェフが、世界中の観光客の集まる東 大寺周辺(奈良国立博物館前)に昨年8月に、満を持して開業。食材は地元の大和牛や地元産の野菜など、地産地消の精神で本場仕込みの本格派イタリアンを提 供しています。レストランは武家屋敷を改装、奈良独自の雰囲気を醸し出し、開業半年ながら奈良で最も予約の取れないレストランとして、一躍、全国から注目 される存在となりました。

地方の出張先でシェフと会話すると、「地方でしかできないこと」は、「都会でしかできないこと」よりたくさんあると、口を揃えて言います。例えば、収穫 直後から味覚が落ちる野菜、鮮度の落ちの激しいカニなど、多くの食材は、地方だからこそ最高の状態でお客様へ提供できます。また、レストランの目の前に海 や山、畑のある抜群の環境で調理をすることは、料理人にとっても、またお客様にとっても素晴らしい環境と言えます。

今、私の住む新潟県の燕市と三条市でも、地産地消のレストラン開業に向けて動き出しています。燕と三条の両市が連携し、「燕三条プライドプロジェクト」 を結成し、「燕三条ブランド」を国内外へと発信すべく様々なプロジェクトを行っていますが、その中核となるプロジェクトが、燕三条の地域資源を活かしたレ ストラン事業です。国内製のカトラリー(ナイフ、フォークなど)や金属製調理器具製造の国内シェアNo.1は燕市と三条市であり、地元産の料理関連の道具 を使用し、地元食材を活かした本格派レストランの開発は、燕三条地域待望の事業でもありました。

また、燕三条の野菜と果物は、全国でも有数の品種数を誇り、地元野菜をレストランで提供すると共に、「燕三条野菜」をブランド化させ、全国へ売りだして いくプロジェクトも、同時進行で行っています。またレストランで使用する建物は、燕三条の金属産業ゆかりの古民家を改築し、シェフは燕三条出身者を招聘し ていく方向性で話を進めています。特に燕三条出身のシェフは世界中で活躍しており、東京でミシュラン3つ星獲得のオーナーシェフが燕市出身(44歳)、パ リの日本料理で、日本人初のミシュラン星獲得のオーナーシェフが三条市出身(41歳)など、燕三条出身の新進気鋭のシェフが、世界の料理業界をリードして います。

燕三条の地域資源をフルに活かした「完全」地産地消(カトラリー、キッチンツール、食器、食材、シェフ、建物)のオーガニックレストランは、来年 2011年の開業を目指し、異業種の地元若手経営者が一体となってプロジェクトを進めています。燕三条という地域の「誇り=プライド」を拡大再生産できる 夢のレストラン。世界的金属加工産地・燕三条の産業観光を促進すべく、世界中から燕三条へ足を運んでいただける拠点として、今年2010年は、地域一丸と なり、「燕三条プライドプロジェクト」を遂行させていく所存です。