[ 第39号 ]クールジャパンが日本活性化の起爆剤に

 「クールジャパン(=かっこいい日本)」と海外から評価され、10年が経過しようとしています。ファッション、デザイン、アニメ、和食、伝統文化、更にはロボットや環境技術のハイテク製品など、日本のさまざまな文化が、流行を次々と生み出す「かっこいい」ものとして、海外に受け入れられていることを指します。これまで、海外における日本に対するイメージは、19世紀後半の「ジャポニズム」に代表される伝統的な工芸品や美術品に始まり、戦後の経済成長を牽引してきた「メイド・イン・ジャパン」に代表される企業ブランドでした。そして近年、日本は「クール・ジャパン」として世界的に脚光を浴び、その勢いは年々増しており、日本活性化の起爆剤として期待されています。

   日本オリジナルの文化を海外へ発信し、海外で幅広い展開を図ろうとするクールジャパン。 政府は「日本が東日本大震災から立ち上がり、世界で輝くための知的財産戦略、とりわけクールジャパンの推進が重要」と、今年6月8日付で、経済産業省・製造産業局に「クール・ジャパン室」を設置。さらに先月9月13日には、野田首相がクールジャパンのロゴを最終決定し、今後、政府のポスターなどで使用するほか、民間企業も使用出来るようにしたいと発表しました。日本がクールジャパンという統一的、長期的なコンセプトの下で、中小企業の海外進出の促進、世界に羽ばたくことを夢見る若手クリエイターの人材育成など、日本の新成長戦略の一環として、政府は様々な戦略を計画しています。

   日本のクリエイティブ産業は急成長を遂げており、世界のアニメ放送の6割が日本のアニメと言われています。また、音楽、映画などの分野においても、世界最高峰の舞台で活躍するようになり、和食、とりわけ寿司は世界的なブームになっています。その他、伝統芸能、伝統工芸なども、かつてのように特殊なジャポニズムの文化としてではなく、グローバルに通用する様式美として見直され始めました。クールジャパンは、グローバル展開に通じ、日本の新たな経済成長の原動力としての可能性を秘めています。これらをクールジャパン産業として推進すれば、年間相当額の創出が可能となり、日本全体のイメージを高め、他産業への波及効果も期待出来ます。

   日本独自の文化や伝統に深く根ざしたもの、日本人にとって当たり前のものの中にこそ、真のクールジャパンが潜んでいます。コピーできない日本固有のアイデンティティに、外国人の目には「クール」に映るのでしょう。今後の日本のあり方として、海外の視線を意識することの無いまま全国各地に埋もれているものを発掘、海外に通用する新たな価値を見出し、グローバルにビジネス化していくことの必要性を感じます。また、国内には優秀な中小企業やクリエイターが数多く存在しますが、それらをまとめ上げて海外に打って出るようなプロデューサー的存在が不足しています。語学はもちろんのこと、ライセンスビジネスにおける交渉術や法務知識を持った人材の育成が不可欠であり、そのためには官民一体での取り組みが必要です。

   そして、クールジャパンの顔とも言える映画やアニメといった映像は、言葉の壁を超えて日本の魅力を総合的に伝える上で影響力が極めて大きいものがあり、グローバルに発信できる優れた映像コンテンツ産業の構築が期待されます。お隣の韓国では、映画、ドラマ、音楽などのコンテンツ産業の海外展開は、政府の強力な助成制度と保護政策の下で実践されており、さらには、そのイメージを活かした観光や電気製品の輸出を促進し、官民を挙げての振興によって大きな経済効果を生み出しています。韓国のコンテンツ産業の海外展開は、国からの積極的な支援によって成り立っていますが、これまで民間の企業努力に頼ってきた日本でも、同様の支援体制を求める声が上がっています。

   日本は素晴らしい知的財産を持ちながらも国内志向が強く、海外においては潜在的な魅力を十分に発揮出来ていないのが現状です。官民一体となってクールジャパンの魅力を高め、世界市場に対して総合的な施策を展開すると共に、日本に関心を持つ観光客やビジネス客を引き寄せ、それに伴う内需拡大による国内経済の活性化にもつなげていきたいものです。厳しい経済状況にある今だからこそ日本は立ち上がり、日本の知的財産を大いに活用して世界の舞台でより輝けるよう、クールジャパンを推進していく時です。日本人が相互扶助の精神を持って取り組むことが、まさにクールジャパンであり、こうしたプロセスを積極的に発信していくことが重要ではないかと思っています。