[ 第21号 ]新潟日本酒業界の大いなる可能性

新潟県内の91蔵元が一堂に会し、自慢の美酒を振舞う「にいがた酒の陣2010」が3月13日(土)、14日(日)、新潟市内で開催されました。会場に は蔵元直送の約500種類の日本酒が集まり、全国各地から2日間で約9万人の日本酒ファンがはしご酒を心ゆくまで満喫。入場料1,500円(当日券 2,000円)で自由に試飲でき、普段接することの少ない杜氏や蔵人から日本酒への想いに耳を傾けながらの試飲は、日本酒ファンにはたまらないイベントで す。今年で7回目の開催となり、今や新潟を代表するイベントとして全国から注目を集めています。

「にいがた酒の陣」では、約30蔵元の方々とお話をさせていただきましたが、新潟の日本酒は「超軟水の水」「雪の降る環境」「杜氏・蔵人の技術」、主に この3つに美味しさの秘訣があると思いました。全国屈指の豪雪地帯・新潟の湧水は超軟水のため、日本酒を柔らかくまろやかにさせ、雪は空気中の雑菌を減ら し、雪による長期低温発酵は雑菌の繁殖を抑えます。そして、美味しさの決め手は何と言っても杜氏と蔵人の技術。長年に渡り築かれてきた新潟の伝統技術を継 承、発展させ、また杜氏と蔵人の鍛え抜かれた五感により、常に高品質な日本酒が生産されています。

さて、現在の日本酒業界は、低コストで量的拡大を追う動きと、付加価値の高い品を追求していくという2つの動きがあります。新潟の日本酒は後者に当ては まり、より品質の高い日本酒を開発し、それを顧客へしっかりと伝えていくことでブランド力を高めていく戦略が実践されています。この高付加価値への追求 は、世界各国の日本食ブームに対応すべく海外市場を開拓していくことが大変有効な戦略となり、新潟県内の先進的な蔵元では、既に海外進出を積極的に推し進 めています。

新潟の日本酒業界での海外輸出額は年々伸びており、半数近くがアメリカに輸出され、次に韓国、香港と続きます。現在、アメリカ全土には約10,000店 の日本食レストラン、さらに欧州に目を向けると、ロンドン市内だけでも約300店の日本食レストランが存在します。この数字を見ただけでも、いかに世界各 国が日本食ブームで沸いているかがお分かりいただけるかと思います。日本食ブームが世界的に広がるにつれ、吟醸酒などの高級日本酒の需要も高まっており、 新潟の日本酒が世界中の日本食レストランで提供されるようになりました。

一方、日本酒の特色である「食中酒」の利点を活かせば、日本食レストラン以外の需要を掘り起こすことも可能と思われます。一昔前、アメリカ人が食事中に 飲むお酒は主にワインであり、その他のお酒は食前か食後に飲んでいたと言います。しかし、昭和50年頃から国内大手酒造メーカーが「松竹梅」「月桂冠」な どの銘柄をアメリカにて生産を開始すると、アメリカではワインと同じ食中酒としての認知度が徐々に高まっていきました。日本酒は世界各国、様々な料理との マリアージュが可能なため、食中酒としての需要拡大も、さらに推し進めていく必要性があるでしょう。

今、食の世界では、料理一皿ごとに相性の良いお酒を提供する「デギュスタシオン」を楽しめるお店が増えていますが、先日、チーズに新潟の日本酒を合わせ るというお店に出会いました。日本酒の香りがさらにふくよかになり、ワインより相性が良いのでは、と思ってしまうほど見事なマリアージュを体認。この時、 日本酒はワインに負けずとも劣らない素晴らしい食中酒として、限りなく大きな可能性を秘めていると感じた瞬間でもありました。

新潟の日本酒は清澄で美しく、酒品という点では世界に冠たる酒です。世界中の日本食レストラン、そして、各国料理のレストラン需要を掘り起こしていくこ とで、新潟の日本酒は世界の食市場に大きな影響力を発揮していくことになります。そして、新潟の日本酒の存在が、世界各国で興っている「日本ブーム(ネ オ・ジャポニズム)」をさらに過熱化させる起爆剤としての役割も期待でき、これからの新潟の日本酒業界からは目が離せません。