[ 第34号 ]身体と心を優しく解きほぐすハーブティー

    ハーブとは、伝承医学に基づいて薬理作用や医療作用が認められ、飲用や料理に用いられる香草、薬草の総称です。歴史は大変古く、人間とハーブの関係は約 5000年前の古代エジプト時代まで遡ります。近代医学が登場する以前、ハーブは病気や感染症と戦うための唯一の療法であり、さらには心を優しく解きほぐ す、貴重な医療用の薬として愛用されてきました。古代より医療用に使用されてきた歴史が証明しているように、近年、日本国内においてもハーブの持つ有効成 分を健康に役立てようと、ハーブを煎じる「ハーブティー」の需要が高まっており、ハーブ専門店は全国的に増加傾向にあります。
  ハーブティーは、自然の恵みであるハーブの医療効果を体内に取り入れるだけではなく、美味しく上品な香りを楽しめる、極めて健康的な飲み物です。ハーブの 小売店ではドライハーブの販売が一般的ですが、お勧めは、やはり摘み立ての生ハーブ。収穫時期が限定されるものの、みずみずしくさわやかな香りで有効成分 をたっぷりと含みます。お庭やベランダなどで栽培した自家製ハーブなら、よりフレッシュで香り高いハーブティーが楽しめます。一方、ドライハーブは、ハー ブ小売店にて多種多様のハーブを年間を通して手軽に入手できますが、生ハーブに比較すると香りはやや減少し、時間の経過と共に有効成分も少なくなります。
  ハーブティーを淹れるティーポットは、銅製品が適しています。江戸時代まで、弊社は「薬鑵屋覚兵衛(やかんや・かくべい)」という商号で主に薬鑵を製作し ており、「薬」を煮出す「缶(鑵)」の名の通り、薬鑵は漢方薬草を煮出す道具として使用されてきました。銅の優れた熱伝導と保温力によって漢方薬草がしっ かりと蒸れ、成分を十分に抽出できるほか、銅イオンの働きにより、雑味の無い、まろやかな漢方に仕上がります。この蒸らすという機能に最適な銅製品は、 ハーブティーをしっかりと淹れる道具としても応用でき、ハーブの成分が十分に抽出され、香りがいっそう高まります。ガラスや陶磁器など、他素材のポットで 飲み比べをしていただくと、その香りの違いに驚かされます。
   身体に様々な効果が期待できるハーブティー。その代表的なハーブの主な効用を記してみました。眠れない夜に「ラベンダー」、気分を落ち着かせる「カモマ イル」、眼の疲れに「ハイビスカス」、美肌に「ローズヒップ」、ダイエットに「マルベリー」、肝臓の特効薬「アーティチョーク」、花粉症に「エルダーフラ ワー」、風邪に「ユーカリ」、発熱に「レモングラス」、胃痛に「ミント」、むくみや泌尿器系の改善に「ジュニパー」、呼吸器系の改善に「タイム」、血糖値 の低下に「ビルベリー」、糖尿病の改善に「ネトルリーフ」など。ただし、ハーブは一種の医薬品でもあるため、妊婦や持病持ちの方は長期間の飲用を控えるべ きハーブもあります。医師にご相談の上、飲用してください。
  ハーブティーは継続的に飲用することで、身体に素晴らしい効果を発揮しますが、悪い症状をピンポイントで改善するという考え方ではなく、その症状の背景を 心と身体の両面から捉え、ハーブを選択することが重要です。このように、ハーブの持つ有効成分を活かし、健康に役立てる療法を「フィトテラピー(植物療 法)」と言います。例えば肌の老化を防ぎたい場合、美肌に有効な「ローズヒップ」の飲用だけでなく、肌の大敵である疲労や不眠に有効なハーブであったり と、全身的に身体を見て、複数のハーブを選択します。「この症状には、このハーブ」というのは一つの目安として考え、ハーブの存在を大きく捉えることが フィトテラピーの原則です。
  身体への高い効能と香り高いハーブを美味しく味わうという二重の喜びを、同時に手に入れることができるハーブティー。その効果を熟知し、ご自身の体質に あったハーブを見つけ、そのハーブを生活の中に取り入れることは、身も心も健康で、幸せな人生を送るための要素の一つではないかと思っています。そして、 ハーブを楽しむためには、定期的な運動の実践も重要です。運動は身体へのハーブの吸収力を高め、よりハーブの効用を高めることができます。ハーブティー は、人類が永年に渡り継承してきた伝統的な健康飲料。四季折々のハーブを親しみ、ハーブティーを楽しむことの豊かさと喜びを、ぜひ、皆さまも味わってみて はいかがでしょうか。