[第126号]  大阪万博からネオ・ジャポニスムを興す

 2025年、55年ぶりに再び大阪で万博が開催されることになりました。誘致活動には大阪府、大阪市、関西経済界、そして政府が一丸となり、オールジャパン体制で展開し、開催決定後に安倍普三首相は「国際博覧会の開催は、日本の魅力を世界に発信する絶好の機会」とした上で、「開催地のみならず日本を訪れる観光客が増大し、地域経済が活性化する起爆剤になると確信している」との談話を発表。2020年東京五輪に続いて5年後に大阪万博という世紀のビッグイベントが続くことで、日本の地場産業の魅力を世界に対してアピールする絶好の機会となり、産業観光を柱とした観光立国日本の礎を築くという期待も高まります。

 大阪万博の開催期間は、2025年5月3日〜11月3日までの185日間。大阪市此花区の夢洲を会場として「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、160ヵ国・地域・機関の参加を計画しています。来場者の予測は2800万人で、そのうち訪日外国人は300万人と計算しています。また、全国への経済波及効果は約2兆円と試算しており、関西以外にも全国各地へ訪日外国人が流れていくことも期待されます。消費意欲の旺盛なインバウンドの関心が、モノ消費から体験型のコト消費へと移行していることも追い風として働くと考えられ、大阪万博は関西地域のみならず、全国の地場産業を多くの人たちに知って頂ける機会となるでしょう。

 過去の五輪開催地のインバウンド数を調べると、開催翌年に一時的に減少した国もありましたが、その後は例外なく伸び続けており、五輪開催国はその余熱でインバウンドを増やしています。2020年東京五輪も、五輪を契機に訪日意欲が高まった外国人が増え、五輪後もインバウンドは上昇し続けていくことが考えられます。2018年のインバウンドは3000万人を突破しましたが、政府が掲げる11年後2030年の目標は6000万人。東京五輪に加え、大阪万博の開催よって日本がさらに注目を浴び、観光立国の実現に向け日本が官民一体となって努力すれば、十分実現可能な数であると考えます。

 明治時代、政府は輸出拡大などを目的に、全国の地場産業の生産者に対して万博出品を奨励し、工芸などの日本製品が次々と海を渡りました。すると、世界の美術史上類を見ない超絶な技法を駆使した日本製品を目の当たりにし、欧米人は驚愕。万博を機に、約260年間鎖国していた謎めいた国から一躍、日本ブーム「ジャポニスム」が興りました。そして1970年、日本の次代への希望と夢の象徴として、アジア初、日本で最初の万博が大阪で開催され、戦後復興著しい日本を世界へアピールし、世界有数の経済大国・日本の礎を構築しました。万博の存在は、明治時代から現在に至るまで日本の経済発展に大きく寄与してきており、今後も万博を契機とした経済発展が望まれます。

 2025年大阪万博は、健康や医療分野における人工知能(AI)や仮想現実(VR)などの先端技術の発展が紹介される見通しですが、来場された訪日外国人を大阪から全国の地方都市へと流す仕組みも構築していくべきであり、大阪万博を契機に産業観光に向けたポジティブな雰囲気を作り出し、地方創生に繋げていきたいものです。私は10年後、訪日外国人が究極のコト消費を求め、地場産業の生産者へ直接会いに行く、本格的な産業観光時代が到来すると考えています。明治の「ジャポニスム」が、当時の日本の技術力が海外の地で認められ花開いたものであるなら、次は日本の産地だからこそ得られる体験そのものを、私は「ネオ・ジャポニスム」として掲げ、各地で花開かせたいと考えます。地方創生とはつまり、価値の再発見です。日本の産地ならではの他では味わえない体験を五感で楽しむ「ネオ・ジャポニスム」という新たな価値を創造することが、産地を活かし、日本を活かすことに繋がると私は信じています。