[第69号]朝活の時代へ

 本日4月1日、行政を中心に新年度の始まりです。ようやく日照時間が長くなり、朝の目覚めも幾分快適に感じている方も多いのではないでしょうか。「早起きは三文の徳」。都心のオフィス街では早朝セミナーや早朝異業種交流会が大盛況で、書店では起業家など著名人による早起き指南本がズラリと並んでいます。今、まさに世は「朝活」ブームの到来です。以前、早起きというと、ランニングやウォーキングに励む方が多数を占めていましたが、最近の早起きの特徴は「体力作り」だけではなく、「自分磨き」という傾向があり、勉学や趣味に活かすという方が増えています。新年度を契機に、早起きをする方が多くなるとのことで、これから「朝活」実践者がより増加する時期となります。

  2009年開校以来、受講生延べ1万人以上、朝活のパイオニアと言われている「丸の内朝大学」は、農業から金融まで幅広いクラスを展開。自身の業務内容に関わるテーマはもちろん、興味のあるテーマを学び、教養やスキルを磨く絶好の機会として、ビジネスマンの人気を集めています。私も朝大学で鎚起銅器の講義を行ったことがありますが、参加者の方は、朝大学で得る学びの成果はもちろんのこと、早起きして「自ら学びの時間を作り出しているという充実感が魅力」とおっしゃっていました。朝7時からスタートするセミナーに参加することが前向きなプレッシャーとなり、朝早く起きるためには早く寝る必要があるため、夕方以降、早く寝るための段取る力も育成することができます。

  グローバル化に伴い、早朝時間帯を使用し、オンラインや通信の英会話学習を行うビジネスマンも急増しており、その早朝需要の高さから、大手語学スクールでは午前7時スタートのクラスを開講し、好評を得ています。早朝は雑音のない静かな時間帯であり、睡眠後のため脳や身体の疲れが無く、集中力が高まる時間帯でもあります。また、記憶力を要する語学学習は脳の記憶システムに負荷が掛かる夜より、朝に行う方が効果的と言われ、英会話の学習は朝が最適とのこと。語学以外でも、企画作成やデザインといったクリエイティブな作業も朝が最適と言われ、早朝の2時間は深夜の5時間分に匹敵するぐらい作業の処理能力が高い時間帯とのことです。 
 
  「夜残業」よりも気分スッキリの「朝残業」へ。昨年10月から実施された伊藤忠商事の新しい残業制度の試験的変更は、全国紙の一面トップ記事になるなど、大きな話題となりました。同社の勤務時間は午前9時から午後5時15分。この度の残業制度は午後10時を完全消灯とし、やり残した業務は翌朝5時以降に回すという制度です。一番脳が働く朝の時間帯を仕事に多く費やすことで業務の効率化を図り、通勤ラッシュに遭遇しないことで気持ちにゆとりが生まれます。また、早く帰宅できることでプライベートの充実が図れ、家族との時間も生まれます。伊藤忠商事が先行して実施したこの制度は、昨日3月31日までの試験的な実施。今後も継続し、日本企業の新しい残業システムとして定着していくかどうか。個人的には定着すべき制度と思いますが、その成り行きが注目されます。

  燕三条では「燕三条・畑の朝カフェ」が全国ニュースでも多数取り上げられ、昨年はその取組に対し「グッドデザイン賞」を受賞しました。早朝の田畑のロケーションを活用した農園体験型カフェで、地域の果樹園、畑、ハーブ園などを会場に、農園まるごとの魅力を感じていただこうと、生産者自らが企画を練り、採れたて野菜や果樹を使った食事や畑仕事のミニ体験を行います。2年前に発足し過去10回開催しましたが、毎回全国から応募が殺到し、倍率は約10倍という人気ぶり。そして、ものづくりの街・燕三条という土地柄、食器やテーブルなどは全て燕三条製。農業と工業を繋ぎ、若手農家と若手経営者が連携したプロジェクトでもあり、燕三条の地域活性化にもつながっています。

  総務省が発表している「社会生活基本調査」によれば、日本人の平均起床時刻は年々早まり、現在6時37分とのデータがあります。出勤前の時間を有効に使う「朝活」という用語が一般化している現在、環境省は朝型生活提案「朝チャレ!」を推進しており、それに伴って、朝の時間帯を狙ったビジネスも活発化しています。スーパーは早朝需要をめぐる争奪戦が激化しており、開店時刻を全店午前7時としたイオン。超高齢化社会をむかえ、早朝を生き生きと活用する「アクティブシニア」の朝食需要として、ガスト、すかいらーくなどでは朝食メニューを充実。早朝ビジネスはこれからのビジネスキーワードとなり、今後も需要拡大が見込まれます。これからは「朝活」の時代へ。「朝活」実践者の急増に伴い、日本の社会構造も朝型へ変化しようとしています。