[第2号]老舗旅館の新たなブランディング

今月は、群馬県・伊香保温泉の老舗旅館「副一」様が取り組むブランディングについて、ご紹介いたします。「副一」様は、創業400年。17代に渡って旅 館を経営する伊香保の名門で、この度、貴賓室として営業されていた別館を大改装し、富裕層をターゲットとした新たな高級旅館ブランド「諧暢楼(かいちょう ろう)」をオープンさせました。二人一部屋約20万円という価格設定で、主に首都圏の富裕層や海外客をターゲットに、高級旅館ブランドとしての確立を目指 しています。

室内は飛騨家具や竹を素材とした最高級の調度品を配置し、寝具には羽毛の宝石として知られる一枚50万円の「アイダーダウン」の布団を採用。また、室内 やお食事処では、新進気鋭作家の伝統工芸品の数々が使用され、そこはまるで工芸ギャラリーのようです。弊社製品もたくさん収めさせていただき、いたるとこ ろで鎚起銅器を使用することが出来ます。そして食事は、地産地消の精神で地元の旬の食材を活かし、技と心を尽くした日本料理の数々で舌鼓。厳選のワイン、 日本酒を、それぞれの料理に合わせて提供するという独自のスタイルで、身も心も満たされる究極のディナーを楽しむことが出来ます。

このように、設備や食事の素晴らしさに大変感銘しますが、さらに感銘を与えてくれるのが、スタッフの方々の洗練されたサービスです。サービス業でありが ちなマニュアル化されたサービスではなく、臨機応変に対応するきめ細やかな心配りは、清々しい気持ちにさせてくれます。コンセプトが「旅先が自分専用の 宿」だけあって、自分だけの旅先空間を演出し、まるで伊香保の別邸であるかのような錯覚に。リピーターもかなり多いようで、1週間連泊されるお客様もおら れるそうです。

ホテル、旅館業界では、低価格路線を打ち出す傾向がある一方、「諧暢楼(かいちょうろう)」のように、より高級化を図る傾向も見られます。箱根、熱海な ど、首都圏に近い温泉では、平日仕事後の富裕層をターゲットとした高級旅館の開業が相次いでおり、好評とのこと。洗練された設備に、洗練されたサービスを 提供すれば、顧客は確実に支持して下さることを証明しています。

副一17代・福田社長は、伊香保温泉に新たな付加価値を提案することで、単価アップ、新規顧客獲得の必要性を主張され、「諧暢楼(かいちょうろう)」の 存在によって、伊香保温泉全体のレベルアップしていくことを目指しています。同じ地域において、同業他社と価格競争で躍起になっては、お互いの企業体力が 消耗するだけでなく、産地体力も低下していきます。これからの地場産業に求められることは、地域資源を活かした新たな付加価値の創造によって、他産地には 無い「独自性」を打ち出すことであると思います。産地内の共存共栄の精神が、地域産業の特色となり、また魅力となり、地域の活性化につながっていくことで しょう。