[第7号]世界が注目する日本の伝統素材と伝統技術

毎年1月と2月は、欧州を中心に国際消費財見本市の開催時期で、世界最大のフランクフルト「アンビエンテ」を筆頭に、ミラノ「マチェフ」、パリ「メゾ ン・エ・オブジェ」、ニューヨーク「ギフトショー」などが主な見本市です。弊社は5年前から上記全ての見本市に一通り出展してきましたが、現在はフランク フルト「アンビエンテ」に一本化して出展しています。

「アンビエンテ」は、世界約90ヶ国、約5000社が出展し、期間中は世界各国から約15万人のバイヤーが訪れ、商談が行われます。見本市は10棟の建 物で構成され、その広さは東京ドーム総面積の約6〜7倍。世界第2位の見本市、ミラノ「マチェフ」の倍以上の展示スペースとバイヤーの数で、名実ともに世 界最大の消費財見本市として圧倒的な規模と人気を誇ります。日本企業の出店数は年々増加傾向にあり、また、日本から視察に訪れる企業も年々増加傾向にあり ます。「アンビエンテ」は海外進出の登竜門として、今後、より注目度が高まっていくことでしょう。

さて、会場内では約5000社の世界の有力企業が出展しているだけあり、個性豊かな商品がひしめきあっています。その中で商品の認知度を高めていくため には、よほど差別化できる商品力を持っていないとバイヤーに素通りされ、世界市場では戦えません。このような環境下、日本の地場産業が世界の流通に乗せて いくためには、デザインのみの追求では限界があります。造形の追求は行き着くところまで到達しており、これからの商品開発のあり方として、日本ならではの 素材を採用し、素材感を強調させ、世界の文化と融合させた機能性の高い道具を開発することが求められています。

中でも今後、世界的に注目を浴びていきそうな素材は「漆」です。漆は英訳すると「japan」であり、漆を使用して世界の文化と融合させた商品は、世界 市場を賑わせていくことになると思います。燕市の地域ブランド「enn」では、漆に着目し、ステンレス製のカトラリーやサービングプレートに漆を塗り、欧 州の高級レストランをターゲットとして商品化したところ、フランス料理の巨匠ジョエル・ロブションをはじめ、世界のトップシェフからレストランで採用され るようになりました。漆以外でも、新潟県のプロジェクト「百年物語」では、曲げわっぱ、竹などの素材と伝統の技に、世界のバイヤーから多数のオファーがあ りました。日本の伝統素材を使用し、日本の伝統技術を駆使した商品の海外市場における可能性は、極めて高いものがあります。

今から100年前、日本の伝統素材や伝統技術が欧州人から賞賛され、「ジャポニズム」ブームを巻き起こしましたが、再び、欧州人をはじめ世界各国の人々 に再認識される時代となりました。これからの日本の地場産業は、祖先が素晴らしい日本文化の美意識と感性を持ち合わせていたことを深く認識し、またそれを 誇りにモノづくりを行っていくことが大切であることを、「アンビエンテ」に出展し、あらためて体感してきた次第です。