[ 第24号 ] 百貨店業界に明るい兆し

新潟を代表する繁華街「古町(ふるまち)」。その古町の一等地に位置する百貨店「新潟大和(だいわ)」は66年の歴史に幕を閉じ、先月25日(金)に閉 店しました。大和は新潟の象徴として、新潟県民なら誰もが憧れ親しんできた夢のデパート。一時は東京の大手百貨店を押し退け、全国の百貨店年間売上・第3 位を記録し、地方百貨店の雄として君臨していた時代も。30年前は弊社最大のお取引先であり、閉店当日、最後のご挨拶ため大和へ行きましたが、各階は昔を 懐かしむご年配のお客様で溢れ、中には涙を流されているお客様もおり、時代の変遷を感じさせる一日となりました。

近年、百貨店の閉店が相次いでいます。長引く景気低迷に加え、郊外型大手スーパーや低価格量販店など、新興小売業の台頭が百貨店衰退の最大の原因と言わ れています。これらの店舗は車社会に対応し、広大なスペースの無料駐車場を完備しています。そして、ネットビジネスも急速に発展してきました。仕事後、時 間を気にせず自宅で気軽に商品を購入できる時代となり、百貨店を取り巻く事業環境は大きく変化しています。また、家庭や企業を訪問する個人外商や法人外商 の需要が減少し、百貨店流の伝統的な商法が通用しなくなってきたことも大きな痛手になっています。

さらに百貨店衰退の原因を作った要因は2つ挙げられます。1つは海外有名ブランドのテナント運営の依存度を高めたことです。一時はケタ外れの売上を記録 し業界用語で「お化け品番」とも呼ばれ、百貨店事業の中核を成す存在でしたが、リーマン・ショック以降、最も売上減の打撃を受ける格好となり、百貨店の足 腰を弱めました。もう1つは、マスコミのあまりにも過剰な「百貨店大不振!」「百貨店崩壊か?」という情報が飛び交ったこと。百貨店へのマイナスイメージ は、国民へ徹底的に植え付けられ、売上減の傷口をさらに広げてしまいました。

しかしながら、逆風激しい百貨店業界にあって、業績を伸ばしている百貨店が存在します。JR駅に隣接している百貨店です。鳴り物入りで登場した1997 年開業の「JR京都伊勢丹」の成功を機に、「JR名古屋高島屋」「JR札幌大丸」と相次いで駅隣接の百貨店を開業。いずれの店舗も百貨店不振の中、業績を 伸ばしており、この3店舗が最新の百貨店ビジネスモデルとなって、2011年は大阪駅に「JR大阪三越伊勢丹」、博多駅には「JR博多阪急」と、JRを代 表する駅に百貨店が次々と開業します。百貨店業界はJRと提携することによって、新たな市場資源の開拓に成功しました。

一方、売場革新も進んでいます。新宿伊勢丹メンズ館は商品陳列をブランド別ではなく、靴やかばんといったアイテム別で分け、ブランド依存の体質を脱却。 驚愕の売上を記録し、紳士服は売れないという業界のジンクスを打ち破りました。また、首都圏中心に「デパ地下」は、バイヤー渾身の食品セレクションと女性 客を引き付ける店舗デザインにより、食のエンターテインメントへと成長。最上階の催事場で開催される「物産展」は全国の隠れた名品を発掘し、全国区の商品 に成長させる場として定着していました。これらの成功事例は全国の百貨店に広がり、ブランド依存の体質を改め、「自主編成」の売り場構築を推進する機運を 高めています。

そして、百貨店業界に朗報が。中国人民元の上昇と、中国人向けビザ発給緩和です。中国を中心に外国人の百貨店での購買額は、前年50%増という驚異的な 売上幅を記録しており、弊社百貨店催事でも、高額商品を躊躇なく購入する中国人のバイイングパワーには、もはや驚くばかり。人民元上昇は中国人の購買意欲 を刺激し、ビザ発給緩和は中国人観光客の大幅な増加が見込め、まさに好機到来と、全国の百貨店はこぞって中国人が決済に使用する「銀聯(ぎんれん)カー ド」対応システムの導入を計画しています。中国人が百貨店の救世主になりそうです。

百貨店冬の時代と言われて久しく、ここ10年間で多数の百貨店が閉店しました。しかし、この10年間で百貨店のオーバーストア状態は大きく改善され、売 上も回復傾向にあり、生き残った百貨店には大きなビジネスチャンスが待ち受けています。百貨店の本質は自らの手で商品を発掘し、手塩に掛けて育て、豊富な 商品知識と真心のサービスでお客様へ提供すること。即効性ある海外有名ブランドの誘致やセール販売の乱発は改め、中長期的ビジョンを持ち、衣・食・住の地 場産業の隠れた「メイド・イン・ジャパン」を発掘、育成するシステムが確立しつつあります。生き残った少数精鋭の百貨店による「百貨店新時代」の到来。そ の日は、そう遠くはないと思っています。