[ 第26号 ]花火は光と音が織りなす総合芸術

夏の夜空を彩る、幻想的かつ芸術的な光の大輪と大音響。花火は私たち日本人の心を和ませてくれる、光と音の総合芸術です。日本的な感性を秘めた花火の美 しさは、人間の原始の感情を刺激し、まさに陶酔へと誘っているかのよう。菊や牡丹などの割物と呼ばれる定番の形や、スターマインと呼ばれる連続打ち上げ花 火など、光と音のデザイン、ショートしての企画・演出力は毎年確実に進化しており、花火は日本を代表する現代アートとして、ますます魅力的な芸術文化とし て発展を遂げています。

新潟県は花火大国です。長岡市「長岡まつり大花火大会」は日本屈指の人気花火大会であり、秋田県大曲市、茨城県土浦市の花火大会と共に、「日本三大花火 大会」として全国の花火ファンが集結します。また、小千谷市片貝(旧片貝町)の「片貝まつり大花火大会」は、毎年、世界最大の四尺玉(40号玉)を打ち上 げ、花火サイズ世界一としてギネスブックに登録。柏崎市の「ぎおん柏崎まつり海の大花火大会」は世界唯一の海上三尺玉に加え、尺玉300連発は約7分間に も及び、夏の海を彩る花火大会として人気を博しています。

上記の長岡・片貝・柏崎の花火大会は「越後三大花火大会」と言われていますが、中でも日本一との呼び声高い長岡は別格の花火大会です。1945年、長岡 市中心部を8割焼失した長岡空襲からの復興を願い、翌年、戦災被災者への鎮魂や恒久平和を願い花火大会を開催。その後、日本を代表する花火大会として成長 しました。その規模やデザイン性には、日本の花火文化の集大成を見ることが出来ます。長岡市は花火都市としてのブランディングを展開しており、様々なシン ボルマークに花火が用いられ、また街の至る所で花火のデザイン画が描かれているなど、花火を核にした地域おこしが実践されています。

その長岡市は2004年、中越地震によって甚大な被害を受けました。大震災に負けず、一日も早い復興に願いを込め、長岡市民の間から翌年の花火大会で、 復興祈願花火「フェニックス」を打ち上げようとする動きが興りました。これに賛同した市民自らが企画し、「みんなであげようフェニックス!」を合言葉に、 全国各地から協賛金を得て、翌年の花火大会で念願の打ち上げを実現。打ち上げ場所約10ヶ所、幅約2.7Kmに渡るフェニックスをかたどった世界最大級の 超大型スターマインは、震災の被害にあった方々に勇気と誇りを与え、観覧者は皆、感涙にむせびました。

一発一発の花火には人々の情熱やロマンが凝縮されており、日本人の花火に対する憧憬の念は、時代と共にますます高まるばかりです。花火は美しく儚い(は かない)ものであり、光と音が織りなす美しさはもちろんのこと、一瞬で消えてしまう儚さもまた、私たちの心を引き付けて止まない理由なのかもしれません。 日本人の花火に対する感情は、桜に代表されるような、儚く消えゆくものに対する美意識に共通するものがあるのでしょう。

日本の文化を大切に継承し、より一層技術的な進展を遂げている花火産業は、顧客満足度をさらに高めるための演出力を養う努力を怠っていません。夜空とい う空間を構成する造形と色彩感覚を高め、また、音楽や照明装置を組み合わせ、起承転結のある構成力に優れた大会に仕上げるべく、エンターテインメント能力 向上にも尽力されています。花火と音楽が織りなす相乗効果は、ダイナミックかつ繊細なストーリーを語り出し、その華麗な演出は、まさに光と音の総合芸術。 花火は日本の将来に、光り輝く明るい陽射しを灯しているかのようです。