金「鎚」で、打ち「起」こしながら、
器を作り上げていく「鎚起」銅器。
鎚起銅器の製作には 様々な道具を使用し、
湯沸を製作するためには数十種類の鳥口(鉄棒)、金鎚を使用します。

銅を叩いて伸ばすのではなく、叩きながら縮めていきます。
縮めるのも丸めるのも職人の勘一つ。
湯沸の寸法はすべて職人の頭の中にあるのです。

一度叩くと銅は硬くなるため、
製作途中に火炉の中に銅器を入れ柔らかくします。
最後に玉川堂独自の着色を施し、
職人の幾つもの技が織り込まれた湯沸が完成します。

金鎚

共有する金鎚もあるが、ほとんどは個人で所有する。持ち手の木柄の長さ、太さなど、長年の修行の中で自分に合った道具の感覚を養っていく。
金鎚の他に木槌もある。打ち絞りによる成形、表面の均し、様々な鎚目による模様付けなど、それぞれの工程に応じてサイズや形状の異なる鎚を使い分ける。

鳥口

銅器を成形するための土台となる鉄棒で、ケヤキの木で出来た上がり盤という台に穴をあけ、そこに差し込んで固定する。
鳥口という呼び名は、先端が鳥のくちばしのように見える事から、明治時代に玉川堂が付けたもの。
300種類ほどある中から使い分け、必要に応じてヤスリで適切な形状に職人自身が調整をすることもある。

打ち起こし

作る銅器の寸法に合わせ切り抜いた銅板を、木槌で叩いて縁を起こし、皿上にする。
このとき縁に大きなしわが寄るようにし、打ち絞りの際にこのしわが重ならないように叩く。

焼きなまし

銅は叩くと固くなるが、火炉に入れて赤くなるまで熱を加え、その後水に浸けて急冷すると、再度柔らかさを取り戻す。
例えば一枚の銅板から注ぎ口まで継ぎ目無く打ち出す「口打出」という湯沸は、叩いては焼き鈍す作業を15回ほど繰り返して、最終的な形まで整える。

打ち絞り

皿状に打ち起こした銅板を、鳥口を土台にして金槌で叩きながら、器の口径を徐々に縮めて行く。
このとき縮めた分だけ縁にしわができるが、このしわが重ならないように叩くのが、高い職人技の成せるところである。

金付け・金焼き

銅の表面に溶かした錫を手引きでめっきし、炉やバーナーで焼く。この時の焼く温度によって、仕上りの色が変わってくる。
銅器への着色に必要な工程で、焼き加減は時間測定できるものではなく、職人の勘所をおさえる経験値を要する作業である。
大正時代に門人達の熱心な研究によって確立された。

仕上げ均し

打ち絞りによって荒れた表面を、鏡面に仕上げた金鎚を用いて、全体を美しく整える。

彫金

先端が様々な形状の鏨(タガネ)を用いて金属に装飾を施す技法。
銅板を立体的に打ち出す「肉彫り」や、銅板を削って紋様を描き出す「片切り彫り」、金や銀などの貴金属を銅板に打って嵌め込む「象嵌」などがある。

着色

硫黄の溶液につけて化学反応により黒くなった銅器を、職人が手で丁寧に磨き、最後に釜の中で煮て酸化発色させる。
それらの工程の違いによって全部で9色の色彩を銅器に施す。