[第1号]日本茶文化の啓蒙

飲料業界空前の大ヒット商品に成長した、お茶のペットボトル。伊藤園「お〜いお茶」、サントリー「伊右衛門」、キリン「生茶」が3大ブランドと言われ、 この3つのブランドが大きなシェアを占めています。総合シェアNo.1は「お〜いお茶」ですが、コンビニのシェアでは「伊右衛門」がNo.1という記事を 見たことがあります。コンビニでは、ブランドイメージやパッケージデザインの良し悪しで売上が大きく変動すると言われており、ブランディングとしては、サ ントリー「伊右衛門」が他社より上、ということになります。

「伊右衛門」のブランディングですが、本木雅弘、宮沢りえの時代劇風の広告と竹形のペットは、洗練されたブランドイメージを伝えており、さらに、「濃い 目」「焙じ茶」などのサブブランド展開でも、同じく時代劇風の広告を採用することによって、「伊右衛門」のブランドイメージを高めています。コミュニケー ションツールに一貫性があり、ブランディングの成功事例といえるでしょう。

このように、お茶ペットボトルの世界は、各社、商品のブランディングに経営資源を集中させ、激しい戦いが繰り広げられています。しかし、肝心なお茶の美 味しさは、というと、どのブランドもほとんど変わらないと言っても過言ではなく、ブランディングばかりが先行している世界ともいえます。そして残念なこと に、お茶ペットボトルの存在は、急須でお茶を淹れるという、お茶本来の味わい方を風化させてしまうという現象をもたらしました。「伊右衛門」は、京都「福 寿園」の茶葉を使用したことによって、「福寿園」の知名度は飛躍的に上がったものの、「福寿園」が一番期待していた茶葉の売上は、思うように伸びていない ようです。そして先日、静岡県から日本茶関連の組合の方がご来社され、ペットボトルの普及によって茶葉の売上が減少した、と嘆いておられました。

しかし、お茶ペットボトルの普及によって、日本茶がより身近になったことは紛れもない事実です。これを機に、急須でお茶を淹れる美味しさ、楽しさを啓蒙 していくことが、我々伝統工芸業界の使命と思っています。お茶ペットボトル業界とは共存共栄の関係であり、お互いに日本茶の文化を継承、発展させていく関 係を構築していくことが大切であると考えています。

弊社が全国の主要百貨店にて、年40回ほど開催している催事(実演展示販売会)では、銅器の製作実演の他に、銅の急須を使用したお茶の試飲会を随時行っ ています。催事では、弊社で昔から愛用している円熟味ある急須を使用していますが、銅イオンの効用によって、まろやかで風味豊かな、ひと味違う日本茶を楽 しむことが出来ます。きっと日本茶に対して、新しい発見があることでしょう。弊社スタッフが心を込めて淹れた「日本茶」を、ぜひ一度お試しいただければ幸 いです。