[第6号] 燕金属加工業の集合体「enn」プロジェクト

燕市は金属製台所用品の生産量が全国一で、カトラリー(スプーンやフォークなど)生産は全国シェアの95%を占める一方、手業を駆使した職人が多数存在 する産地であり、燕市は複合金属加工産地であるともいえます。この燕の金属加工業界が一体となり、国際的に評価を受けられるような日本のアイデンティティ を持つブランドを「燕ブランド」として構築しようと、5年前、燕商工会議所が主催し、燕市内の若手経営者が集結。グラフィックデザイナー・左合ひとみ氏を 招聘し、「enn」プロジェクトを発足させました。

現在、日本国内では、伝統的な地場産業にデザインの力を加えることで活性化を行う動きが見られますが、それらはいずれも「伝統をモダンに」という一方向 のベクトルであり、ステンレス製品や伝統工芸の鎚起銅器などが共存し、和洋混在である燕市のケースには当てはまりません。さまざまな金属加工品業者の複合 体である燕市が独自のアイデンティティを確立するためには、それぞれが一つの核へと向かう、複数のベクトルが必要でした。

そこで、「和」の個性を持ちにくい実用的なステンレス製品には、日本古来の良き素材である漆と日本の伝統的な文様を採用することで、「和」へと歩み寄っ た新鮮な個性を創り上げることに。そして、鎚起銅器は、西欧の食文化の現状を踏まえた商品やモダンなデザインを取り入れることで、現代的な「和」への到達 が可能と考えました。

「enn」は、古今東西の食文化、素材、技術の融合を通して、時代に即した刷新を図り、新しい「和」を世界に提案するという左合ひとみ氏が提示したコン セプトのもと、各社、商品開発に取り組みました。開発された商品は、フランクフルト、パリ、ニューヨークの海外メッセに出展し、海外市場を開拓。フランス 料理界の巨匠ジョエル・ロブションなど世界各国の高級レストランや、欧州の高級ティーショップなどが「enn」の商品を取り扱っていただけるようになり、 徐々に世界的認知度が高まりつつあります。

また、今年は化粧品・POLA様のプレゼント企画に「enn」が採用され、化粧品の年間お買い上げ額に応じて、「enn」の商品がプレゼントされます。 漆塗りの金属製品は、キャンドルスタンド、フォトフレーム、置き時計などのインテリア関連アイテム、鎚起銅器はペンダント、ピンブローチが採用されまし た。「enn」は、今後、キッチン・食器関連のみならず、インテリアやアクセサリー関連の商品開発し、世界市場を開拓していく方向性です。

燕の金属格好業界を一体化させることによってスケールメリットが生まれ、地域認知度が高まるほか、海外市場開拓はより効果的に実践出来ます。今後はさら に、三条市の金属加工業界と一体化させる動きがあります。地域、そしてメーカー自らが情報を発信し、地域ブランド、企業ブランドを構築していける地域づく りを、燕三条地域が一体となって行っていきたいと思っております。